更新日:2025年9月10日
万が一、病気やけがをした際に「お金の心配をせず、安心して治療に専念したい」と考える方は多いでしょう。日本の公的医療保険は充実していますが、保障の対象外となる費用も存在します。公的医療保険だけではカバーできないような、万が一の出費に備えるためにあるのが民間の医療保険です。 この記事では、医療保険の必要性や保障内容、自身に合った保険の選び方などをわかりやすく解説します。
病気やけがで治療が必要になったとき、経済的な負担を軽くするための仕組みが医療保険です。日本では、すべての国民が何らかの公的医療保険に加入する「国民皆保険制度」があるため、原則として医療機関での窓口負担は1〜3割で済みます。
しかし、公的医療保険だけですべての費用をカバーできるわけではありません。民間の保険会社が取扱う医療保険は、公的医療保険では足りない部分について補う役割を担っています。
なお、生命保険文化センターの調査によれば、民間の医療保険・医療特約の世帯加入率は95.1%に上ります。
医療保険は、運営主体によって「公的医療保険」と「民間医療保険」の2つに分けられます。以下に、それぞれの特徴をまとめました。
項目 | 公的医療保険 | 民間医療保険 |
|---|---|---|
運営主体 | 国、地方自治体、健康保険組合など | 民間の保険会社 |
加入義務 | あり | なし |
主な保障内容 | 医療機関での窓口負担が1〜3割になる | 契約時に決めた給付金が支払われる |
保険料 | 所得などに応じて変動 | 年齢、性別、保障内容などに応じて変動 |
告知 | 不要 | 必要 |
公的医療保険は「かかった医療費の負担を軽くする」仕組みであるのに対し、民間医療保険は「入院日数や手術に応じて、あらかじめ決めた金額を受け取る」仕組みであるところが大きな違いです。
また、民間医療保険は任意加入のため、加入時には保険会社に現在の健康状態や過去の傷病歴などを「告知」する必要があります。
民間の医療保険が必要とされている理由は、公的医療保険でカバーしきれない、以下のような費用に備えるためです。
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日本の公的医療保険は手厚く、医療機関での窓口負担は1〜3割に抑えられています。さらに「高額療養費制度」があるため、1カ月の医療費が上限額を超えた場合、その分の払い戻しを受けることが可能です。
例えば、70歳未満で年収500万円の方が、病院の窓口で医療費として100万円を支払ったとしましょう。このケースでは、3割にあたる30万円の負担が窓口で必要となります。
しかし、高額療養費制度を申請すると、自己負担限度額は8万7,430円(=8万100円 +(100万円ー26万7,000円)× 1%)に抑えられるため、21万2,570円の払い戻しを受けられます。

ただし、高額療養費制度は1カ月ごとに適用されるため、治療が長期化すれば毎月のように一定の自己負担が発生し、負担が大きくなる可能性もあります。
また、次のような費用は公的医療保険制度の対象外となるため、全額自己負担です。
項目 | 概要 |
|---|---|
差額ベッド代 | 希望して個室や少人数の病室に入院した時の室料 |
先進医療の技術料 | 厚生労働大臣が定めた高度な医療技術を用いた療養にかかる費用 |
食事代 | 入院中の食事代 |
日用品費・交通費 | 入院生活に必要なパジャマ代や、家族が見舞いに来るための交通費など |
入院が長引くと、これらの自己負担費用も徐々に積み重なっていきます。
また、入院によって働けなくなり、収入が減るリスクについても考えておく必要があります。生命保険文化センターの調査では、直近の入院時に逸失収入(働けなくなったことによる収入減)があった人の割合は17.4%で、その平均額は30.2万円でした。
会社員であれば、働けなくなったときも傷病手当金があります。これは、病気やけがで連続して4日以上働けなくなったときに、給付金を受け取ることができる制度ですが、自営業者やフリーランスは対象外です。よって、働けなくなるとすぐに収入がゼロになるリスクがあります。
民間の医療保険は、基本保障である「主契約」と、ニーズに合わせて追加できる「特約」で構成されています。
多くの医療保険では「入院給付金」と「手術給付金」を主契約としています。
入院給付金は、病気やけがで入院したときに受け取ることができるお金です。大きく分けて、以下2つのタイプがあります。
給付金タイプ | 内容 |
|---|---|
日額タイプ | 「入院給付金日額 × 入院日数」で計算された金額が支払われる |
一時金タイプ | 入院日数にかかわらず、入院した場合に10万円や20万円といったまとまった金額が支払われる |
一般的に「治療を目的とする入院」が給付金の支払い対象となっているため、以下のような場合は支払い対象外です。
手術給付金は、病気やけがの治療で所定の手術を受けたときに支払われるお金です。
手術給付金の額は「入院給付金日額の10倍・20倍」のように入院給付金日額と連動して決まるタイプや、「10万円・20万円・40万円」のように固定の金額が支払われるタイプに分かれます。
また、商品によって給付対象の手術には違いがあり、以下のいずれかとしているケースが一般的です。
入院給付金と同様、基本的に治療を目的とした手術を保障対象としているため、以下のようなケースでは基本的に給付金は支払われません。
主契約に加えて、より手厚い保障を備えるために付加するのが特約です。医療保険の代表的な特約には、次のようなものがあります。
特約の名称 | 概要 |
|---|---|
通院特約 | 退院後の通院治療に対して給付金が支払われる |
女性疾病特約 | 乳がんや子宮筋腫など、女性特有の病気で入院した時、主契約の入院給付金・手術給付金に上乗せして給付金を受け取ることができる |
先進医療特約 | 公的医療保険の対象外である先進医療の技術料を保障する(実費保障) |
三大疾病保障特約 | がん・心疾患・脳血管疾患で所定の状態になったとき、まとまった一時金を受け取ることができる |
生活習慣病特約 | 三大疾病に加え、糖尿病、高血圧性疾患、肝硬変、慢性腎不全などの生活習慣病で入院や手術をしたときに上乗せで給付金を受け取れる |
特約を付加すると、自身が不安に感じる保障をピンポイントで手厚くできます。しかし、その分、保険料の負担も大きくなるため、必要性については慎重に検討が必要です。
医療保険の保険期間は「定期型」と「終身型」の2種類に分けられます。


種類 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
定期型 |
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|
終身型 |
|
|
若い間は保険料の安い定期型で備え、経済的に余裕ができてから終身型に見直すという考え方もできます。
一方で、将来の保険料アップを避けたかったら若いうちに終身型に加入するほうが、生涯で支払う保険料の総額を抑えられるケースもあります。
医療保険は主契約の保障内容や、付加できる特約のバリエーションが豊富なため、どれを選べばよいか迷うことも少なくありません。
ここでは、自分に合った保障を考えるためのポイントを紹介します。
生命保険文化センターの調べによると、入院時の1日あたりの自己負担費用は平均で2万700円です。この金額には、医療費の自己負担分だけではなく、差額ベッド代(1日あたり平均で約6,862円)や食事代、交通費なども含まれています。
このデータをもとに考えると、入院給付金日額は「1〜2万円程度」に設定しておけば、入院時にかかる費用の多くをカバーできるため、安心して治療に専念できるでしょう。
貯蓄に余裕がなく、入院したときの一時的な収入減などにも不安がある場合は、一時金タイプを検討するのもひとつの方法です。
生命保険文化センターの調べによると、直近入院時の自己負担費用と逸失収入の総額は、平均26.8万円です。一時金タイプを選ぶ場合は、20〜30万円を目安にすると、多くのケースに対応できるでしょう。
また、医療保険の入院給付金は、1入院あたりの支払限度日数(60日や120日など)や、保険期間全体での支払限度日数(1,095日など)が決まっています。
厚生労働省によると、入院日数の平均は28.4日のため、支払限度日数を60日以上に設定しておけば、十分にカバーできると言えます。
ただし、1入院についての考え方は保険会社によって異なるため、注意が必要です。
多くの医療保険では「同一の病気(または関連する病気)で、退院日の翌日から180日以内に再入院した場合は、1回の継続した入院とみなす」といったルールが定められています。
例えば、支払限度日数60日の保険に加入中の方が、がんで50日間入院して退院したとします。その100日後に、同じがんの治療で30日間再入院した場合、2回の入院は「1入院」とみなされます。
この場合、1回目の入院で50日分の給付金を受け取っているため、2回目の入院では残りの10日分しか給付金が支払われません。

約款などで細かい条件を確認したうえで、支払限度日数についても検討しましょう。
手術への備えを手厚くしたい場合、入院日額に連動する「倍率タイプ」の保険では、入院給付金日額を高く設定しましょう。一方、手術の種類で金額が決まる「固定給付タイプ」では、給付金額が大きいプランを選ぶのがおすすめです。
ただし、入院給付金日額を上げたり手術給付金の額を大きく設定したりすると、保険料全体が高くなり、月々の負担が重くなります。
実際には、十分な金額の入院給付金を設定しておけば、手術にかかる費用もまかなえるケースは多くあります。経済的な余裕がある場合に、手術給付金を手厚くするかどうか検討するとよいでしょう。
特約は、ご自身の健康に対する不安やライフプランに応じて、本当に必要なものだけを選択しましょう。
特約の種類 | このような人におすすめ |
|---|---|
通院特約 | 通院中に仕事を休む場合の収入減が不安な人 |
女性疾病特約 | 妊娠や出産時のリスクに備えたい人 |
先進医療特約 | 治療の選択肢を増やしたい人 |
三大疾病保障特約 | 喫煙習慣がある場合など、がんのリスクや脳血管疾患などによる長期入院のリスクが不安な人 |
生活習慣病特約 | 不規則な生活を送っており、将来的な健康面に不安がある人 |
自分に合った医療保険を選ぶためには、保障内容だけではなく、ご自身の状況や契約時のルールも確認しておきましょう。
必要な保障は、年齢や性別、ライフステージなどによっても大きく異なります。
例えば20代男性であれば、一般的に収入はまだ安定していませんが、大きな病気にかかるリスクはそれほど高くないと考えられます。そのため、万が一の入院に備え最低限の入院・手術の保障を確保しつつ、保険料はなるべく抑えられるシンプルなプランを選ぶのもひとつの方法です。
一方、30代〜40代で子どもがいる男性の場合は、家計を支える世帯主であることも考えられます。万が一の長期入院による収入減少などに備えるため、入院給付金日額を手厚く設定したほうが良いかもしれません。
また、生活習慣病のリスクが高まってくる年代でもあるため、がん・心疾患・脳血管疾患に備える三大疾病特約や、生活習慣病特約などの付加も検討してみましょう。
このように、ご自身の状況によって最適な保障は変化します。結婚や子どもの誕生、住宅の購入といったライフステージが変わるタイミングで、保障内容が今の自分に合っているか、定期的に見直すようにしましょう。
告知内容や審査の基準は保険会社によって異なります。一社で加入を断られたとしても、他社では条件付き、あるいは無条件で加入できる可能性はあるため、複数の保険会社を比較してみましょう。
医療保険に加入する際は、現在の健康状態や過去の病歴などを保険会社に正しく申告する「告知義務」があります。保険会社は告知された内容に基づき、契約を引き受けるかどうかを判断します。
持病や既往症がある場合、加入を断られるケースも少なくありません。しかし、必ずしも加入できないわけではなく、特定部位・特定疾病不担保(※)や、保険料の割増といった特別条件付きで契約できる場合もあります。
健康上の理由で通常の医療保険への加入が難しい場合は、告知項目が少なく、健康に不安がある方でも加入しやすい「引受基準緩和型医療保険」を検討するのもひとつの方法です。ただし、一般的な医療保険に比べて保険料は割高に設定されており、加入してから一定期間は給付金が減額されるなどの制約があります。
したがって、まずは一般的な医療保険への加入を検討し、それが難しい場合には次に引受基準緩和型医療保険を検討する、という順番がおすすめです。
※特定の部位(腰・肺など)や特定の病気(椎間板ヘルニア、白内障など)については、一定期間保障の対象外とする契約
日本の公的医療保険は優れた制度ですが、病気やけがの治療に関わるすべての費用をカバーできるわけではありません。
公的医療保険適用後の自己負担分や、差額ベッド代などの保険適用外費用、さらに入院で働けなくなった場合の収入減少といった、経済的な負担に備えるうえでは民間の医療保険が役立ちます。
医療保険を選ぶ際には、入院や手術にかかる費用をイメージしたうえで、ご自身のライフステージなどを考慮しましょう。そのうえで、本当に必要な保障だけを組み合わせることで、無駄なく備えることができます。