更新日:2025年9月10日
人生100年時代を迎え、多くの方にとって直面する可能性のあるリスクが「介護」です。内閣府の調査によると、65歳以上の約5人に1人が要介護(要支援)認定を受けています。 「自分が介護状態になったとき、大切な家族に金銭的な負担をかけたくない」と考える方は多いでしょう。介護・認知症保険は、こうした「家族への想い」を形にするひとつの方法です。 この記事では、民間の介護保険と認知症保険の必要性や基本的な保障内容、ご自身の状況に合わせた選び方について、初心者の方にもわかりやすく解説します。 ※参照:厚生労働省「令和5年度介護保険事業状況報告(年報)」
介護保険は、病気やけがなどにより、保険会社が定める所定の要介護状態になった場合に給付金を受け取ることができる保険です。
一方、認知症保険は、医師により認知症と診断された場合や認知症が原因で所定の介護が必要となった場合に給付金を受け取れる、認知症に特化した保険を指します。
生命保険文化センターの調査によると、介護保険・介護特約の世帯加入率は20.1%、認知症保険・認知症特約の世帯加入率は7.6%です。加入率はともに前回調査から増加しており、注目度の高まりがわかります。
民間の介護保険・認知症保険の必要性を理解するために、公的介護保険制度との違いを確認していきましょう。
公的介護保険は、介護サービスそのものを給付する「現物給付」が原則です。利用者は所得に応じて1割〜3割の自己負担で、訪問介護やデイサービス、福祉用具のレンタルなどのサービスを利用できます。

※参照:厚生労働省「介護保険制度の概要」
民間の介護保険・認知症保険の必要性を理解するために、公的介護保険制度との違いを確認していきましょう。
公的介護保険は、介護サービスそのものを給付する「現物給付」が原則です。利用者は所得に応じて1割〜3割の自己負担で、訪問介護やデイサービス、福祉用具のレンタルなどのサービスを利用できます。
これに対して、民間の介護保険・認知症保険は、給付金を現金で受け取れるのが大きな特徴です。使い道に制限がないため、介護サービスの自己負担分や、以下のような公的介護保険対象外の費用に充当できます。
また、公的介護保険は、65歳以上で要介護・要支援の認定を受けた人、または40歳から64歳までで特定の16疾病が原因で要介護状態になった人が対象です。
公的介護保険の第1号被保険者 | 公的介護保険の第2号被保険者 | |
|---|---|---|
対象者 | 65歳以上の人 | 40歳以上65歳未満で以下の医療保険に加入している人
※40歳で自動的に資格を取得、65歳で自動的に第1号被保険者に切り替え |
受給要件 |
| 要介護(要支援)状態が、老化に起因する疾病(特定疾病)による場合に限定 |
保険料の徴収方法 |
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|
つまり、40歳未満の方や、40歳から64歳の方でも交通事故による後遺障害や特定疾病以外の病気で介護が必要になった場合には、公的介護保険を利用できません。
民間の介護保険は、このような公的制度ではカバーしきれない範囲の経済的リスクに備える役割を担っています。
介護や認知症がどれだけ身近なリスクなのか、公的なデータから確認してみましょう。
厚生労働省の調べによると、2024年3月末時点で65歳以上(公的介護保険の第1号被保険者)のうち、要介護(要支援)認定を受けている人は約695万人です。
年齢ごとの要介護認定率をみると、65歳以上75歳未満では4.3%であるのに対し、75歳以上では31.1%と、高齢になるほど介護のリスクは高まることがわかります。
一方、介護は高齢者特有のリスクとは言い切れない面もあります。
以下は、要介護者が介護を必要とするようになった主な原因をまとめたものです。
順位 | 原因 | 割合 |
1位 | 認知症 | 23.6% |
2位 | 脳血管疾患(脳卒中) | 19.0% |
3位 | 骨折・転倒 | 13.0% |
脳血管疾患や骨折などは若年層でも発症する可能性があるため、年齢にかかわらず誰にでも介護が必要になる可能性があるといえるでしょう。
65歳以上の高齢者のうち、認知症の人は約12%にあたる約443万人と推計されています(2022年時点)。
認知症の前段階といわれる軽度認知障害(MCI)の人も含めると、65歳以上の高齢者の約3人に1人が認知症に該当するとされています。
先述の「介護が必要となった主な原因」のデータでもわかる通り、認知症は要介護状態になる大きな原因のひとつです。
認知症になると、判断能力の低下から財産管理が難しくなったり、徘徊などにより家族の介護負担が増加したりと、特有の課題が生じます。
実際に認知症などで介護が必要になった場合、どのくらいの費用がかかるのでしょうか。
生命保険文化センターの調査によると、介護にかかる一時的な費用(リフォームや福祉用具の購入など)は平均で47万円、月々の費用は9.0万円です。
また、介護期間の平均は55.0カ月(約4年7カ月)とされているため、このデータをもとに介護費用の総額を単純計算すると、約542万円(=9.0万円 × 55.0カ月+47万円)となります。
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ただし、介護方法によって費用は異なり、在宅介護(月額5.2万円)に比べ、施設介護(月額13.8万円)のほうが高額になる傾向があります。
介護保険と認知症保険の具体的な保障内容を解説します。
介護保険の給付金の受け取り方には、大きく分けて「一時金タイプ」と「年金タイプ」があります。
給付金タイプ | 概要 |
|---|---|
一時金タイプ | 所定の要介護状態になったときに、まとまった金額を一度に受け取れる |
年金タイプ | 所定の要介護状態が続く限り、毎年または毎月、一定額を受け取れる |
比較的軽度な要介護1や要介護2と認定された場合は一時金を支払い、より重度な要介護3以上になった場合は年金を支払う、といった商品もあります。
認知症保険では、所定の認知症と診断確定された場合に、まとまった一時金が受け取れます。
脳細胞が破壊され、脳が萎縮することなどで発症する「器質性認知症」に罹患した場合に保障されるケースが一般的です。
保障対象となる認知症の例 | 保障対象外となることが多い認知症の例 |
|---|---|
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また、認知症の前段階である軽度認知障害(MCI)と診断された場合に、一時金を受け取ることができる商品もあります。
ご自身やご家族に合った最適な保険を選ぶために、押さえておきたいポイントについて解説します。
介護保険を選ぶ際には、どのような費用に備えたいのかを具体的にイメージしましょう。そのうえで、給付金の受け取り方や支払い条件を確認することが大切です。
備えたい費用に合わせて、給付金タイプを選びましょう。
一時金タイプがおすすめのケース | 年金タイプがおすすめのケース |
|---|---|
|
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在宅介護と施設介護のどちらを選ぶかによっても必要な費用は変わるため、両方の可能性を考慮し、一時金と年金を組み合わせられる商品を選ぶのもひとつの方法です。
保険金の支払い条件は、保険会社や商品によって異なり、主に2つのタイプに分類されます。
支払い要件のタイプ | 内容 |
|---|---|
公的介護保険制度連動タイプ |
|
保険会社独自基準タイプ |
|
どちらが良いかは一概には言えませんが、もし65歳未満で介護状態になった場合に備えたいのであれば、保険会社独自基準タイプのほうが給付金を受け取ることができる可能性は高くなるでしょう。
各商品の約款などで詳細な支払い条件を確認してから契約することをおすすめします。
認知症保険を選ぶ際は、支払い条件と保険料の支払い期間を確認しておきましょう。
認知症保険の支払い条件は、主に2つのパターンがあります。
一般的に、後者のほうが保険料は割安になる傾向があります。また、どのような診断をもって「診断確定」とするのかも確認が必要です。
「医師による診断」「所定の認知機能検査」「CTやMRIなどの画像検査」のすべてを要件としているケースが多くみられます。
保険料の支払い期間は、一生涯払い続ける「終身払い」と、60歳や65歳など一定の年齢で支払いが完了する「短期払い(有期払い)」があります。


メリット | デメリット | |
|---|---|---|
終身払い | 毎月の保険料負担を抑えられる | 長生きした場合、払込保険料の総額が有期払いより多くなる可能性がある |
短期払い(有期払い) | 収入のある現役時代に支払いを終えることもできるため、老後の負担が少ない | 毎月の保険料は終身払いと比べて高くなる |
ご自身のライフプランや家計の状況に合わせて、無理のない支払い方法を選びましょう。
最後に、介護保険や認知症保険を選ぶときの注意点を解説します。契約前に必ずご確認ください。
商品によって加入できる年齢に上限があるため、80歳を超えると加入するのは難しい場合もあります。
また、「40歳以上」など下限が設けられているケースもあります。若いうちの事故や病気による介護状態に備えたい場合は、若年層でも加入できる商品を選びましょう。
生命保険や医療保険と同じく、加入時には健康状態などについて告知する義務があります。商品によって告知項目は異なるため、複数比較し、自身の健康状態にあった商品を選びましょう。
とはいえ、すでに要介護認定を受けている場合や、認知症の診断を受けている場合は、加入が難しくなることがほとんどです。できるだけ健康なうちに検討を始めましょう。
介護や認知症の状態によっては、被保険者本人が給付金を請求したり、保険料の払い込み方法を変更したりといった手続きが難しくなる場合があります。
介護・認知症保険を選ぶ際は、家族が保険に関する手続きを代行できる制度があるかを確認しておきましょう。「保険契約者代理特約」や「指定代理請求特約」といった特約があれば、家族が手続きを代行することができます。
認知症保険については、契約が成立してから一定期間(一般的に180日〜2年程度)は、たとえ支払い条件に該当しても給付金が支払われない「免責期間」が設定されている商品があります。

免責期間中も保険料の支払いは必要なので、その点も考慮して保障内容と保険料のバランスが取れた商品を選びましょう。
介護や認知症は、将来誰にでも起こり得る身近なリスクのひとつです。公的介護保険制度だけではカバーしきれない、経済的な負担が発生する場合もあります。
こうした場合でも、民間の介護・認知症保険に加入しておくことで、介護サービスの自己負担分や公的介護保険の対象外となる費用まで、ご自身やご家族の負担を和らげることができるでしょう。
介護保険や認知症保険を選ぶ際は、まず「どのような費用に備えたいか」を具体的にイメージすることが大切です。そのうえで、保険金の支払い条件や加入できる年齢、告知、代理請求特約の有無などを確認し、もしものときに安心できる商品を選びましょう。