更新日:2025年2月5日
民間の保険会社が販売している死亡保険は、公的な死亡保障でカバーしきれない部分に備えることを目的としています。 生命保険文化センターの調査によると、約65%の人が公的制度では十分でないと感じています。また、死亡保障に対して備えている人は約70%で、そのうち現預金ではなく生命保険で備えている人は約60%にのぼります(※出典:生命保険文化センター「2024(令和6)年度 生命保険に関する全国実態調査」)。 死亡保険は積立預金とは異なり、加入直後から契約した死亡保険金が支払われるため、多くの方が加入する保険となっています。なお近年では、医療保険に加えて死亡保険にも緩和型の商品が増えてきています。 この記事では、持病がある方向け生命保険の特徴や種類、加入時の注意点などについて詳しく説明します。
持病がある方向け生命保険とは、健康状態に不安がある方でも加入しやすいように設計された生命保険です。
通常の死亡保険では、加入時に健康状態の告知や医師の診査が必要となることが多く、持病や通院歴がある場合は保険料が割増されたり、保障が削減されたりする可能性があります。また、告知の内容によっては加入を断られることもあります。
しかし、持病がある方向け生命保険は持病や通院歴がある方にも死亡保障を提供するため、通常の死亡保険と比べて告知内容が緩和されています。すべての告知項目に「いいえ」と回答できれば、無条件で加入できる仕組みです。
内閣府による令和5年度の高齢化白書によると、日本人の平均寿命とその将来推計のデータから高齢化が今後も進むと見込まれています。
最近は65歳以降も働きながら生活する人が増える一方で、年齢とともに何らかの持病を抱える方も少なくありません。医療技術の発達や健康診断の推進により病気の早期発見は進みましたが、完全に治せる病気ばかりではなく、一生付き合わなければならない病気も多くあります。
このような観点から、持病があっても加入できる緩和型の保険のニーズは高まっています。

※出典:内閣府「令和5年版高齢社会白書」
また、死亡保険は遺族の生活資金だけでなく、死亡時の身の回りの整理資金にも活用できます。
厚生労働省の下記データによると、単身世帯は今後も増加する見通しです。特に、2040年には高齢者の単身世帯は6世帯に1世帯を占める見込みです。
配偶者や子どもなど、身近に死後の整理を頼める人がいない場合には、第三者に有料で依頼しなければならないケースも考えられます。こうした整理費用を準備したい方にとって、簡単な告知のみで加入できる持病がある方向け生命保険は選択肢のひとつになります。

持病がある方向け生命保険と通常の死亡保険の大きな違いは、加入時の告知項目が簡単である点です。
通常の死亡保険では、最近の通院・入院歴や服薬状況、健康診断結果などを詳しく答える必要がありますが、緩和型の場合は「過去3カ月以内に入院・手術を受けたか」など、基本の保障については告知項目がおおむね3つに絞られています。
その代わり、持病がある方向け生命保険の保険料はやや割高に設定されています。これは、通常の死亡保険に比べて、保険金を支払うリスクが高いと保険会社が判断しているためです。
なお、以前の持病がある方向け生命保険の中には、契約から一定期間(多くは1〜2年)の保障が一部制限される「削減期間」が設けられている商品もありました。しかし、現在では削減期限が設けられていない商品が主流となっています。
持病がある方向け生命保険の保障内容の基本的な仕組みは、通常の死亡保険と同じです。一生涯にわたり死亡のリスクを保障する終身保険と、一定期間のみ保障する定期保険の2種類があります。
なお、告知が簡便という観点では一時払い終身保険も見逃せない死亡保険です。一時払い終身保険にも告知が不要な商品や、「現在入院していないか」といった簡単な質問のみで加入できる商品があります。
こうした告知が不要な商品は「無選択型」と呼ばれており、加入できる年齢も90歳までと幅広いため、相続対策として加入する人が多い点も特徴です。
多くの持病がある方向け生命保険では、過去の病歴を細かく問われることはありません。基本の保障については、以下3項目の質問に「いいえ」と答えられれば加入することができます。
なお加入年齢については、通常の死亡保険がおおむね15歳から80歳までなのに対し、持病がある方向け生命保険の多くは20歳から80歳までを対象としています。
通常の死亡保険と同様に、持病がある方向け生命保険の保険期間には「定期型」と「終身型」があります。

持病がある方向け生命保険の定期型には保険期間を「65歳まで」や「90歳まで」のように年齢で設定するタイプと、「10年」や「20年」など年数で設定するタイプがあります。
保険期間を年数で契約する場合は、満了時に自動的に契約が更新されます。この場合手続きは不要ですが、保険料は更新時に上がります。
また終身型に比べると、定期型は解約返戻金がない商品がほとんどであるため、保険料は低く抑えられています。一定の期間だけ死亡保障を手厚くしたい場合、定期型の保険は上乗せの保障として有効です。
なお、保険期間を定期型として設定していても、終身の保障を希望すれば、新たな告知なしで終身保障へ切り替えができる商品もあります。

持病がある方向け生命保険の終身型とは、死亡保障が一生涯続くタイプの保険です。保険料の支払方法には、60歳払い済みや65歳払い済みのように、就労収入がある間に保険料の全額を払い終え、その後は保障が一生続く「短期払い」タイプがあります。
もし、加入年齢が遅い場合は、短期払いにすると月々に支払う保険料が高額になることもあるため、保険料を一生払い続ける「終身払い」を選択するケースもあります。終身払いでは保険料を一生支払い続ける必要がありますが、月々の保険料を抑えられるため、選択肢のひとつとして検討するとよいでしょう。
また終身型の場合、途中で解約すると解約返戻金がある商品がほとんどです。死亡時のリスクに備えるためのものですが、資金が不足した際にも活用できるため、資金の預け先としても利用できます。
持病がある方向け生命保険は、医療保険などに比べ多くの特約はありません。
保障内容も死亡保障に限られているため、選ぶ際の目安として、告知項目や保険料払込免除の対象となる所定の事由、また保険料や解約払戻率などを比較するとよいでしょう。
持病がある方向け生命保険は、保険会社によって告知項目が異なります。同じ持病がある方向け生命保険でも、A社では加入できなかったのに、B社では加入ができたということも少なくありません。複数の保険会社の条件を比較し、自分に合った商品を選ぶことが大切です。
持病がある方向け生命保険のパンフレットでは、表紙を開くとすぐに告知項目が掲載されています。基本の3項目については、すでに解説したようにおおむね以下の通りです。
この3つの告知項目が「いいえ」なら加入可能です。詳細の告知は不要ですが、各項目には細かな注意事項も記載されていますので、よく確認して回答しましょう。
さらに、払込免除特約を付帯したい場合は、別途1~3つの項目に回答しなければなりません。各社で文言は大きく異なりますが、おおむね以下のような告知項目となります。
この項目に、いずれも「いいえ」と回答できれば払込免除特約を付帯することができます。
なお、緩和型保険の告知ではすべて「いいえ」で回答する必要があります。そのため、病名の記載も「など」や「等」といったあいまいな表現は使われていません。告知項目に記載されている病名に該当しなければ、「いいえ」を選択できるという仕組みとなっています。
持病がある方向け生命保険の保険料は、一般の死亡保険に比べておおむね2〜3割程度割高です。しかし、持病がある方向け生命保険の持病があっても加入できるというメリットは大きいと言えるでしょう。
もし、死亡後の整理費用や葬儀費用を確保する目的であれば、短期払いではなく終身払いを選択することで、保険料を低く抑えることが可能です。予算に合わせて複数のプランを設計し、比較・検討することをおすすめします。
持病がある方向け生命保険の保障内容には、通常の死亡保険と異なる点がひとつあります。それは保険金の支払い条件に、高度障害状態が含まれていないことです。通常の死亡保険では、約款所定の高度障害状態に該当すれば、死亡保険金額と同額の保険金が支払われますが、持病がある方向け生命保険では支払われないため注意が必要です。
また、死亡保険に加入しにくく持病がある方向け生命保険を選ぶケースもありますが、持病がある方向け生命保険には、保険料が割高で保障内容が限定的であったり、設定できる保険金額に制限があったりするなどのデメリットもあります。
なお、医療保険より死亡保険の方が、告知により引受できる範囲が多少広くなる傾向にあります。病気の種類や治療の経過を詳しく告知することで、通常の死亡保険に加入できる場合もあります。加入の際には、持病がある方向け生命保険と通常の死亡保険の両方を検討するとよいでしょう。
持病がある方向け生命保険は、健康に不安を抱える人にとって、安心を得るための保険です。持病があっても家族のためや自分の死後の整理資金のために備えたいという思いは、多くの方に共通する思いです。
すでに貯蓄で準備できていれば、あえて保険に入る必要はありませんが、老後の資金不足に備えたい方は、持病がある方向け生命保険も選択肢のひとつとして検討するとよいでしょう。