更新日:2025年1月31日
世帯主に万が一の事態が発生した際、「残された家族の生活をどう守るか」は、多くの方にとって重要なテーマです。収入保障保険は、遺族の生活費や子どもの教育費など、将来にわたる経済的な不安を軽減するために役立つ保険です。 この記事では、収入保障保険の基本的な仕組みや必要性、世帯の状況に合わせた選び方などをわかりやすく解説します。
収入保障保険は、被保険者(保険の対象となる方)が死亡または所定の高度障害状態になったときに、保険期間が終わるまで毎月一定額の年金を受け取ることができる生命保険です。
残された家族が、被保険者の収入の代わりとして毎月の生活費を受け取れるような仕組みになっています。
収入保障保険は、保険期間の経過と共に受け取れる保険金の総額が減っていく点が特徴です。
例えば、保険期間30年、保険金額(月額)15万円の収入保障保険を契約したとしましょう。契約直後に万が一の事態が発生した場合は、総額5,400万円(=15万円×12カ月×30年間)の保険金を受け取ることができます。
一方、契約から20年後に万が一のことがあった場合、受け取る保険金の総額は1,800万円(=15万円×12カ月×10年間)です。

保険期間の満了が近づくにつれて、受け取る保険金の総額が減少していくため、保険期間中は一定の死亡保障が続く「定期保険」や、一生涯の保障が続く「終身保険」に比べると、保険料は割安となる傾向があります。
子どもの成長とともに、遺族に必要な生活費や教育費といった保障額は徐々に減っていきます。そのため、いわゆる「子育て世帯」が合理的に保障を準備する手段として、収入保障保険を活用することが多くなっています。
世帯の家計を支える方に万が一の事態が起きた際、残された家族の生活を経済的に支える仕組みとして、遺族年金制度があります。
しかし、遺族年金は生前の給与がそのまま保障されるわけではありません。例えば、遺族基礎年金(子ども1人の場合、令和7年度)は年額107.1万円(月額 約8.9万円)です。また、会社員(※)の遺族が受け取れる遺族厚生年金は、年額で約49.3万円(月額 約4.1万円)が目安です(※平均標準報酬月額40万円、平成15年4月以後の加入期間のみで計算した場合)。
そのため、公的保障だけで以前の生活水準を維持し、将来の支出すべてをまかなうのは難しい場合があります。実際に、生命保険文化センターの調査によると、公的保障(遺族年金など)だけでは遺族の生活費を「まかなえるとは思わない」と回答した人の割合は66.3% に上ります。
このように、公的な遺族年金だけでは不足する可能性のある生活費や教育費を補い、残された家族の生活基盤を守るために収入保障保険を役立てることができます。
自営業(国民年金) | 会社員・公務員(厚生年金) | |
支給される年金 | 遺族基礎年金 | 遺族基礎年金・遺族厚生年金 |
年金を受け取れる人 |
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注意点 |
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特に遺族基礎年金しか受け取れない個人事業主の方は、遺族の経済的な負担が大きくなりやすいため、収入保障保険に加入しておく必要性は高いといえるでしょう。
収入保障保険に加入する際は「万が一の事態が起きたときに、いつまで・いくら受け取れるか」を契約時に決めます。ここでは、主な保障内容と保険金の受け取り方について解説します。
収入保障保険の基本的な保障(主契約)は「遺族年金」と「高度障害年金」です。
保障内容 | 概要 |
遺族年金 | 被保険者が保険期間中に亡くなった場合に、満期まで年金が支払われる |
高度障害年金 | 被保険者が病気やけがにより、保険会社が定める所定の高度障害状態(両目の失明、両手足の機能を完全に失うなど)に該当した場合に、満期まで年金が支払われる |
基本保障に加えて、オプションで「保険料払込免除特約」などをセットできる商品もあります。
保険料払込免除特約とは、保険会社が定める特定の状態(がん(悪性新生物)・急性心筋梗塞・脳卒中の三大疾病や所定の要介護状態・身体障害状態など)に該当したとき、それ以降の保険料の支払いが免除される特約です。
保障はそのまま継続するため、闘病などにより収入が減った場合の保険料の負担を軽減できます。ただし、特約を付けるとその分保険料は高くなるため、保障内容と保険料のバランスをしっかりと考えて検討しましょう。
収入保障保険の保険金は、原則として毎月年金形式で受け取る「年金受取」で受け取ります。ただし、「一括受取」も選べる商品がほとんどです。受け取る保険金の一部を一括で受け取り、残りを年金形式で受け取るといった柔軟な選択ができる商品もあります。


年金形式の場合、給料のように毎月決まった額が受け取れるため、家計の管理がしやすく、計画的に生活費や教育費に充てやすい点がメリットです。
一方で、年金形式で受け取る場合は、一括で受け取るときと比べて税金の計算が複雑になります。あらかじめ理解しておきましょう。
受取方法 | 課税方法 |
年金受取 |
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一括受取 | 相続税の課税対象 |
※契約者と被保険者が同一で、年金受取人とは異なる場合
一括受取の場合は、子どもの教育資金や住宅ローンの繰り上げ返済など、まとまった資金がすぐに必要な場合に対応できる点がメリットです。
ただし、一時金として受け取る場合、年金形式で受け取る場合に比べて総額が少なくなります。 これは、将来受け取る予定だった年金を前倒しで受け取ることになるため、将来分の利息などを差し引いた「現在価値」に換算(割り引き)されるからです。
収入保障保険は、保険期間中に更新がなく、保険料も一定で変わらない「全期型」と呼ばれるタイプが一般的です。
保険期間の設定方法には、主に「年満了」と「歳満了」の2種類があります。
保険期間 | 概要 |
年満了 | 「10年間」「20年間」のように、契約時からの経過年数で保険期間を定める方法 |
歳満了 | 「60歳まで」「65歳まで」のように、被保険者(保険の対象となる方)の年齢で保険期間を定める方法 |
保険期間は、家族のライフプランに合わせて設定するのが合理的です。一般的には、一番下のお子さんが22歳で大学を卒業し独立する時期や、配偶者が公的年金(老齢年金)を受け取り始める時期(原則65歳)などを目安に設定します。
収入保障保険は、家庭の状況に合わせて「どのくらいの保障を」「いつまで続けるか」を正しく設定する必要があります。ここでは、適切な保障額の計算方法や、加入前に確認しておきたいポイントについて詳しく解説します。
収入保障保険の保険金額(月額)は「万が一の事態が起きたときに、家族の生活に毎月いくら不足するか(必要保障額)」を計算して決めます。必要保障額の一般的な計算方法は以下のとおりです。
必要保障額=(A)遺族の支出(月額)-(B)遺族が得る収入(月額)
この式の中の「(A)遺族の支出(月額)」は現在の生活費から、亡くなった世帯主個人の費用(小遣い、食費、交通費など)を差し引いた金額です。一般的に、現在の生活費の約7割が目安とされています。
また、「(B)遺族が得る収入(月額)」は遺族年金(遺族基礎年金+遺族厚生年金)、配偶者の収入、児童手当などを合計した金額です。
この式をもとに、配偶者の収入の有無に応じ、必要となる収入保障保険の保険金額(月額)をシミュレーションしてみます。
・遺族年金を毎月15万円受け取ることができる
この場合、収入保障保険で備えるべき保険金額(月額)の目安は13万円(=40万円×70%-15万円)です。
・毎月の生活費が30万円の世帯
・遺族年金を毎月10万円受け取ることができる
・配偶者がパートで毎月8万円の収入を得られる
この場合、収入保障保険で備えるべき保険金額(月額)の目安は3万円(=30万円×70%-10万円-8万円)です。
収入保障保険の保険金は、年金形式または一括で受け取れます。毎月の生活費を補うことが目的であれば、家計管理がしやすい年金形式を選びましょう。
一方、子どもがすぐに受験・入学を控えていてまとまった教育費が必要となる場合などは、一括受取を選択するのもひとつの方法です。
収入保障保険を選ぶ際には、保障内容や保険金額以外にも確認しておきたい点があります。
まず、最低支払保証期間の確認です。収入保障保険は、保険期間の満了が近づくと受け取れる保険金総額が減る仕組みになっているため、もし保険期間の終了直前で亡くなった場合、受け取れる年金が少額になってしまう場合があります。
こうした事態に備え、多くの商品には「最低支払保証期間(1年、2年、5年など)」が設定されています。例えば、保険期間が60歳までで最低支払保証期間が5年の契約を考えてみましょう。
もし、保険期間の残りが3年となった57歳の時点で被保険者が亡くなった場合でも、残された家族は3年間ではなく5年間、年金を受け取ることができます。

また、健康状態による保険料割引の有無も確認しましょう。収入保障保険には、健康状態(血圧、BMI、喫煙の有無など)が保険会社の定める基準を満たしている場合、保険料の割引(健康体割引)が適用される商品もあります。
タバコを吸わない方や、健康診断の結果が良好な方は、標準の保険料よりも負担を抑えて加入できる可能性があるため、複数の保険会社の商品を比較してみましょう。
収入保障保険は、家計を支える方に万が一の事態が起きた際、残された家族が経済的に困窮しないよう、毎月の収入(年金)を保障する仕組みの保険です。遺族年金だけでは不足しがちな毎月の生活費を、合理的な保険料でカバーできます。
保険金額や保険期間を決める際には、家族構成やライフプランをもとに、毎月どれくらい不足するかを具体的に試算してみましょう。そのうえで、家庭の状況に合った保障内容を選ぶとよいでしょう。