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【FP監修】アルツハイマー型認知症新薬「レカネマブ」とは?

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厚生労働省の推計によると、2030年には1,500万人もの人が認知症になると言われています。

より身近になっていく認知症。その原因として最も多いのはアルツハイマー型認知症です。
2023年9月、このアルツハイマー型認知症の新薬の製造販売が承認されました。

この新薬は、症状の進行を遅らせる、日本初の薬として脚光を浴びています。本記事では、新薬レカネマブの概要と注意点を明らかにしていきます。

アルツハイマー型認知症の原因とは

認知症とは、さまざまな病気が原因で脳の働きが徐々に低下し、生活に不都合が出てくるようになった状態のことを言います。 その中でもアルツハイマー型認知症は、認知症の原因疾患の中でも7割程度を占める と言われています。

アルツハイマー型認知症は、脳の中にアミロイドベータという異常なタンパク質が溜まることによって引き起こされます。 アミロイドベータの塊は「老人斑」と呼ばれます。

アミロイドベータが蓄積されると、やがて神経細胞が死滅し、脳が縮んでいきます。年齢相応ではない物忘れ、理解力や判断力の低下が徐々に進行していくことが特徴です。

アミロイドベータは、アルツハイマー型認知症を発症する20〜30年ほど前から脳内に蓄積し始めます。その後、物忘れなどの症状が出始める軽度認知障害(MCI)と呼ばれる状態を経て、アルツハイマー型認知症としての症状が出てきます。

こうした中で、アルツハイマー型認知症の進行を遅らせるためには、このアミロイドベータを取り除くことが重要であると考えられ、研究が続けられてきました。

このような背景のもと誕生したのが、新薬レカネマブです。

では、このレカネマブがどのような薬なのか、その概要を見てみましょう。

新薬レカネマブの概要

エーザイ株式会社とバイオジェン・インクが共同で開発した新薬、それがレカネマブです。
レカネマブは、脳の中に溜まっているアミロイドベータと結合します。それによってアミロイドベータは塊を作れなくなり、免疫によって脳内からアミロイドベータが除去される仕組みです。

アミロイドベータが除去されることで、神経細胞の死滅を防ぎ、症状が進行していくことを食い止めるのです。

製薬会社は、レカネマブによって、アルツハイマー型認知症の進行を遅らせることが出来ることを実証しました。

エーザイ株式会社の発表によると、レカネマブを投与された患者は、そうでない患者と比べて、1年半後の認知機能の低下などの症状を27%抑制することができたということです。
これは、アルツハイマー型認知症の進行を7.5か月遅らせることに相当します。

レカネマブは、アルツハイマー型認知症の根治薬ではありませんが、その進行を遅らせることが出来ると証明されたのです。

この新薬は、2023年7月にアメリカで製造販売の承認を得てから、その後9月に日本でも厚生労働省の承認を得ました。

今後、承認から最大90日以内に中央社会保険医療協議会で保険適用と価格について決定がなされます。よって、早ければ年内には使用が開始される見込みです。

注意点

アルツハイマー型認知症待望の新薬ということで、期待を寄せる方は多いでしょう。一方で新薬レカネマブには、注意点もあります。

早期発見がカギ

新薬レカネマブは、アルツハイマー型認知症の患者全員に適応となる薬ではないことに注意が必要です。

具体的には、脳内にアミロイドベータが溜まっていることを検査によって確認出来た軽度認知障害(MCI)または軽度認知症の患者に限られ ます。

レカネマブは蓄積したアミロイドベータに作用します。そのため、症状が進行し死滅してしまった神経細胞に効果を発揮することができません。

アルツハイマー型認知症が進行し、重度の症状がある方は対象とはならないということです。

つまり、アルツハイマー型認知症を早期に発見することが重要となってきます。

早期発見のためには、少しでも異常を感じたら、迷わずに受診することが大切です。

アミロイドベータが蓄積しているかどうかを確認できる検査があります。それは、アルツハイマー型認知症診断の際に用いられる「アミロイドPET検査」です。この検査は、脳内にあるアミロイドベータを可視化するものです。

通常、この「アミロイドPET検査」は自費であり、費用は数十万円 を要します。
新薬レカネマブの適用にあたっては、この「アミロイドPET検査」の所見が重要となってくると考えられます。しかし、現時点では保険適用となっていません。新薬の使用開始にあたって、どこまでが保険適用となるのか、その範囲を注視していく必要があるでしょう。

また施設の数も限られることから、この検査がより気軽に受けられるものとなることが期待されます。

費用が高額となる

レカネマブの価格が高額になることも注意すべきポイントです。

エーザイ株式会社は、販売額を年間2万6,500ドルとしました 。1ドル140円として日本円換算すると、その額はおよそ370万円です。現在国は薬価を協議中です。

もちろん患者側が全額を負担することにはならないでしょう。公的保険の高額医療費制度の対象となれば、70歳以上の一般所得者の場合、14.4万円が年間負担額の上限となります。

ただし、薬代だけではなく、更なる費用がかかってくる可能性もあります。
投薬の際には頻繁な通院や検査が必要となってくるためです。

レカネマブの価格については、高額になる可能性が高いことに留意し、今後の動向に注目していく必要がありそうです。

副作用の懸念

レカネマブの副作用についても確認しておきましょう。

エーザイ株式会社によると、治験では、被験者に生じた副作用は、脳内出血が17.3%、脳浮腫が12.6%に見られました。
脳内出血は、めまいを伴うものが多く、中には大出血となったケースもあります。脳浮腫の症状は、そのほとんどが軽度から中等度であり、80%程が4か月以内に解消されたということです。
死亡例も数例発生しています。しかしこの治験でレカネマブを投与されていない被験者にも同程度の死亡例があることから、この結果だけでレカネマブ投与と死亡の関係性を即断することは難しいでしょう。

エーザイは、脳内出血等の既往がある人は使用を検討する際に注意が必要であるとしています。
この点でも、レカネマブの適応となる人には制限があると言えるでしょう。

また、世界中に多数の読者を持つ医学雑誌「ランセット」では、レカネマブの安全性を懸念する一方で、エーザイ株式会社が公表した治験の結果は臨床的に大きな意味があるものではないと指摘しています。
レカネマブがアルツハイマー型認知症治療 に大きな変革を起こすとまでは言えないというのが、同誌の評価です。

適応となる患者が限定されること、高額な費用そして副作用。期待の集まる新薬ではありますが、注意点も踏まえて冷静に動向を見守っていく必要がありそうです。

まとめ

いかがでしたか。待望のアルツハイマー型認知症新薬。多くの人が期待を寄せるのは当然かもしれません。注意点を踏まえながら、この先の動向に注目していきたいですね。

「早期発見」。これがこれからのアルツハイマー型認知症の治療において一層重要になってくるでしょう。
「おかしいな」と思ったら迷わずに受診することにより、その後の選択肢は広がっていきそうです。

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