【FP監修】支援強化の「子ども・子育て支援金制度」、制度の注意点も解説!
- お 金

2024年2月16日に閣議決定された「子ども・子育て支援法」、ニュースなどで目にされた人も多いのではないでしょうか?
この法案では、国全体で子育てをするという政府の方針のもと、子育て世帯への経済的な支援を行う「子ども・子育て支援金制度」の具体策が決まりました。一方で、施策実現のための資金源として公的健康保険料活用も同時に決まり、公的健康保険料が増えることになりました。
この記事では「子ども・子育て支援金制法」で決まった給付金や補助金などの概略と、制度の注意点について解説します。
●子ども・子育て支援金制度は、子育てにかかる経済的負担軽減を目指す制度
●子育て世帯の給付金などの給付対象拡大・増額を検討
●給付金が増えた分の資金は公的健康保険料の増額で補う計画
●高校生の子どもがいる家庭は所得税や住民税が増える可能性あり
※この記事は2024年4月時点の内容です
子ども・子育て支援金制度とは
「子ども・子育て支援金制度」は、少子化対策として、児童手当の拡充などにより出産・育児・教育にかかる家計負担の支援をするために作られた制度です。この制度では、現在の手当などより給付額が増えるため、その資金源として公的保険金増額も決められました。
子育て世帯の給付金などはどう変わる?
現在の制度と比較しながら新制度の給付金などを確認していきましょう。
児童手当の変更点
児童手当の大きな変更点は次の3点で、2024年12月の給付分から対象になります。
●児童手当を受給できる期間を高校3年3月まで延長
●所得制限撤廃
●第3子以降の給付金増額
児童手当の受給期間は、現在の制度では中学卒業までとなっているものが、高校3年生の3月まで延長されます。また所得制限が撤廃され、保護者の収入に関わらず受給できるようになります。
現在の制度との違いは下表のとおりです。
年齢 | 2024年10月給付まで の給付額(月額) |
2024年12月給付以降 の給付額(月額) |
|
---|---|---|---|
第1子、第2子 | 3歳未満 | 1万5,000円 | 1万5,000円 |
3歳から中学生 | 1万円 | 1万円 | |
高校生 | なし | ||
第3子以降 | 小学生まで | 1万5,000円 | 3万円 |
中学生 | 1万円 | ||
高校生 | なし |
こども家庭庁|児童手当制度のご案内 2. 支給額(https://www.cfa.go.jp/policies/kokoseido/jidouteate/annai)及び厚生労働省|こども・子育て支援について(https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001193844.pdf)をもとに作成
注:2024年10月までの給付は保護者の所得によって表の金額が支給されない場合があります。詳しくはこども家庭庁「児童手当制度のご案内 所得制限限度額・所得上限限度額について」をご覧ください。
なお、現制度の子どもの数え方は、高校卒業までの扶養している子供の人数であり、数え方の変更を検討することも表明されています。
高等教育の修学支援制度
高等教育の修学支援制度は子どもが大学などに通う世帯への教育費支援です。「高等教育」は、大学や短大など高校卒業後の教育機関を指し、この制度では大学・短期大学・専門学校の学生と、高等専門学校の4年生と5年生を対象にしています。
なお、保護者の所得によって段階的に支援額が変わり、一定以上の所得の世帯には支援がありません。
支援は、授業料などの減額と給付型の奨学金で行います。奨学金や授業料の減額の上限は進学先によって次のように分類されています。
自宅通学 | 1人暮らし | ||
---|---|---|---|
大学・短期大学・専門学校 | 国公立 | 35万円 | 80万円 |
私立 | 46万円 | 91万円 | |
高等専門学校 | 国公立 | 21万円 | 41万円 |
私立 | 32万円 | 52万円 |
参考 文部科学省|高等教育の修学支援新制度(https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/hutankeigen/index.htm)
国公立 | 私立 | |||
---|---|---|---|---|
入学金 | 授業料 | 入学金 | 授業料 | |
大学 | 28万円 | 54万円 | 26万円 | 70万円 |
短期大学 | 17万円 | 39万円 | 25万円 | 62万円 |
高等専門学校 | 8万円 | 23万円 | 13万円 | 70万円 |
専門学校 | 7万円 | 17万円 | 16万円 | 59万円 |
参考 文部科学省|高等教育の修学支援新制度(https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/hutankeigen/index.htm)
支援額は、表の金額の満額、満額の2/3、満額の1/3、満額の1/4の区分があります。満額・満額の2/3・満額の1/3の対象は、保護者の所得によって決まります。満額の1/4は2024年に新設された区分で、所得の条件に加え、多子世帯もしくは私立理工農系に在籍していることが条件です。
なお、2025年度からは3人以上子どもを扶養している世帯の高等教育の授業料が無償になります。
子ども・子育て支援金制度の注意点
制度変更による注意点も確認しておきましょう。子育て世帯の給付金などが増える一方、資金準備のために、家計の負担が増える世帯があります。
この章では、誰に・どのような影響が出るか解説していきます。
子育て世帯への影響
子育て世帯は、高校生まで児童手当が支給される一方、高校生(16歳から18歳)の扶養控除が減額される計画です。扶養控除が減ってしまうと、所得税や住民税がかかる金額が増え、結果的に納税額が増えてしまいます。
現在計画されている変更額は次のようになっています。
現在 | 変更案 | |
---|---|---|
所得税の扶養控除額 | 38万円 | 25万円 |
住民税の扶養控除額 | 33万円 | 12万円 |
参考 令和6年度税制改正の大綱の概要(https://www.soumu.go.jp/main_content/000919577.pdf)
平均的な年収の方の場合、どのくらいの影響が出るか計算してみましょう。
この表をもとに納税額の変化を試算してみると、所得税が2万6,000円、住民税が2万1,000円、合計で4万7,000円増える予測です。
なお、高校生の児童手当は1年間で12万円ですので、児童手当が増えた分から増税分を引くと家計の収入は7万3,000円 プラスになる予測です。
所得税は2026年、住民税は2027年から変更予定とされており、最終決定は2025年度に行う計画です。ただし、ひとり親世帯への税制優遇などが強化される計画もあり、世帯によって納税額の変化は異なります。
また、自治体などが独自に教育費の補助を行っている場合があり、補助対象は住民税の課税額をもとに判断されるのが一般的です。政府は課税額が変わることで補助金の受給に影響がないようにと要望を出しているものの、確定ではありません。補助の判断基準が変わらなければ、現在同様の補助が受けられなくなる可能性があります。
国民健康保険加入の子育て世帯以外への影響
子ども・子育て支援金制度の資金準備のため、国民健康保険に加入している子育て世帯以外の公的健康保険料が増額されることになりました。
増額分は、加入している保険機構ごとに決まったルールに従って計算されます。政府発表では「加入者1人当たり月平均500円弱」とされており、これは公的健康保険に加入している総数の平均です。増額分の計算方法は、保険機構によって異なるため、実際には500円以上の負担になる加入者もいます。
また、「加入者」には、保険料を負担する「被保険者」と、被保険者の扶養に入っており、保険料を負担しない「被扶養者」がいます。「加入者」に対して保険料が増額される場合、世帯内の「被扶養者」が増えるに従い、「被保険者」が負担する保険料は大きくなります。
給付金は増えるものの、納税額などが増える懸念も
「子ども・子育て支援金制度」では、子育て世帯の給付額増が決まりました。
一方で、公的健康保険料が増えることになります。国民全体で子育てをする方針に則った結果とも言えますが、増額分がどの家計にどの程度影響があるか不明なところもあります。
また、制度変更には子育て世帯の税制面に影響がある側面もあります。結果的に給付金や補助金が増えるケースと出費が増えるケースの両方があり、複雑化したという見方もできます。家計にどのくらい影響があるか、冷静に判断する必要があるかもしれません。
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