【FP監修】「こども誰でも通園制度」のあらましと課題
- 子 供
2023年12月に閣議決定された「こども未来戦略」でこども家庭庁は「こども誰でも通園制度」の創設を打ち出しました。
保護者が働いていなくても子どもを預けられる制度で注目を集めています。
この記事では、2024年3月時点で公表されている「こども誰でも通園制度」のあらましと課題について解説していきます。
こども誰でも通園制度とは
こども家庭庁が発表した「こども誰でも通園制度」。保護者の就労要件を問わず子どもを預けられる制度で注目している人も多いでしょう。まずは制度の概要や目的、既存の一時預かり事業との違いをみていきます。
制度の概要
こども誰でも通園制度は、保護者の就労要件を問わず月一定時間内に保育所に子どもを預けられる制度です。2026年度より全国の自治体で実施できるようこども家庭庁が制度の整備を進めています。制度の概要は以下の通りです。
対象 | 生後6ヶ月から2歳の未就園児 |
---|---|
利用時間 | 月10時間を限度 |
実施施設 | 保育所、認定こども園、幼稚園、地域型保育事業所、地域子育て支援拠点事業所など |
月10時間というと、1日2時間・週1回程度利用可能です。利用時間が限られることで慣れるまでに時間を要する子どもが一定数いると想定され、子どもが慣れるまでは「親子通園」も可能にするべきではないかと議論されています。
制度の目的
こども家庭庁はこの制度の目的を、子どもの成長を支援し良質な環境を整備することとしています。孤立感や不安感を抱きがちである育児中の保護者に対して、きめ細やかにサポートを行うという側面もあります。子どもを保護者だけが育てるのではなく、社会全体で育てていく方針のもと考案された制度であるといえます。
一時預かり事業との違い
こども誰でも通園制度と似た事業に「一時預かり事業」があります。一時預かり事業は、保護者にとって子どもを預ける必要がある場合に利用できるものです。
それに対し、こども誰でも通園制度は保護者の立場ではなく、「子どもの成長」に必要な環境を整えるために利用できる制度であり、根本的な目的が異なっているといえます。
制度に期待されること
こども誰でも通園制度にはどのようなメリットが期待されるのでしょうか。ここでは2点紹介します。
1.子育て中の孤立感が払拭される
未就園児を育てる家庭では保護者が孤立感を抱えながら子育てをしている場合も多く、こども誰でも通園制度利用によりこうした孤立感が払拭される期待があります。専門的な知識をもつ保育者との関わりによって、自分の子育てを客観的に考えられたり、保育者から子育てのアドバイスをもらったりすることで、保護者が親として成長できる機会になると期待されています。
また定期的に子どもを通園させることによって、保育者とともに子どもの成長を喜び合え、子育ての楽しさを実感できるようになるとされています。
さらに月に一定期間でも子どもと離れて自分のための時間を過ごすことで、子育ての負担感の軽減にもつながると考えられています。
2.子どもが保護者以外の他者と関わる機会となる
子どもにとっては、家庭以外の社会の人と関わる機会となることがメリットとしてあげられます。
同じような年齢の子どもたちとかかわることも子どもの成長にとってよい刺激となると考えられています。
また、先に述べたような保護者にとってのメリットによって、保護者に精神的な余裕が生まれ、結果的に子どもと保護者の関係性が向上していくとも考えられています。
制度の課題
ではこの制度の課題はどのようなものがあるでしょうか。こども家庭庁では定期的に検討会が行われており、2026年度の全国実施にむけて今後も検討が続けられると考えられます。
ここでは、2023年12月の検討会後に作成された「中間とりまとめ」の資料からいくつかの課題をご紹介します。
1.保育体制の整備
こども誰でも通園制度では、毎日通園している子どものなかに、月に10時間を限度として子どもが施設に通うことになります。これにより、受け入れる保育者は通常よりも緊張感をもつと想定されます。試行段階でアンケートを実施し検証を重ね、保育者の緊張感に配慮した制度の整備が行われることが必要です。
また、十分な人員配置を求める保育施設側からの声もあります。短い時間で施設に慣れない子どもを預かるには高いスキルが必要であり、どのような研修体制としていくかも今後検討されていきます。
さらに、障害がある子どもの受け入れ体制も整備が必要です。障害のため外に出ることが難しい子どもに対して、「居宅訪問型」の支援についても検討される必要があるでしょう。
2.運営体制整備
こども誰でも通園制度の概要を聞き、一時預かり事業に似た制度であると感じる保護者も多いのではないでしょうか。先述の通り制度の目的は異なるものの、子どもを預けることができる点は類似しています。こども家庭庁は、本格実施にむけて一時預かり事業との住み分けについても整理していく必要があるとしています。
既存の一時預かり事業でも、都市部などは利用が集中し予約が難しい現状があります。こども誰でも通園制度のモデル事業を実施している文京区では、募集開始後わずか5分程度で定員を超える応募があり、多くのキャンセル待ちが出ている状況であるとの報告もあります。こども誰でも通園制度の全国実施にむけて、より多くの人が利用できる体制整備が求められています。
ひと月当たりの利用可能時間が最大で10時間とされていることについても議論があります。子ども全員が通園できるという制度にするならば10時間という限度は適切との見方もある一方、もう少し利用可能時間を増やすべきとの見方もあります。
また、低所得者世帯などの負担額を軽減するために一定の補助がなされることも検討されています。2026年度の本格実施にむけて検討が重ねられていく見込みです。
今後の見通し
こども家庭庁は2026年度に全国の自治体でこども誰でも通園制度をスタートさせるために、2024年度、2025年度と段階的にモデル事業を拡大させていく予定です。2024年1月時点で108の自治体が試行的事業を実施しています。
2025年度中に制度化し、2026年度から全国実施を計画しています。
モデル事業を実施している自治体からの実施状況や聞き取り結果も報告が上がってきており、制度化にあたってはさまざまな課題を検討しつつ、体制が整備されていく見込みです。
まとめ
今回の記事では、こども誰でも通園制度の概要や課題を解説しました。これまでの一時預かり事業では保護者のニーズが起点になっていたことと比較し、こども誰でも通園制度は、子どもの成長環境を整えるという子ども起点の制度となっているのが特徴です。子どもにとっても保護者以外の保育者や同世代の子どもと関わることが成長にとってプラスになるでしょう。また、保護者の就労状況に関わらず、保護者自身が社会とのかかわりのなかで育児をする環境が整えば、育児の孤立感・負担感の軽減につながると考えられます。
制度化にあたっては課題が多くありますが、2026年度の全国実施にむけた体制整備の動向に注目していきましょう。
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