【FP監修】2022年10月社会保険の加入範囲拡大で何が変わるの?
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2022年10月から、パートやアルバイト勤務など短時間労働者の社会保険加入範囲が拡大します。本記事では、適用範囲拡大の概要と、メリット・デメリットについて解説します。
社会保険の適用範囲拡大とは?
社会保険は国による公的な保険制度で、年金保険、公的医療保険、介護保険、雇用保険、労災保険の5つの総称ですが、一般的には企業などで働く人が諸条件を満たした場合に加入する医療保険(健康保険など)と厚生年金保険の2つを意味します。
これまでパートやアルバイトなどの短時間労働者は、健康保険や厚生年金保険の加入対象から外れることが多く、正社員やフルタイム勤務の方に比べて充分な保障が得られないことがありました。
そこで、2020年5月「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」が成立し、多様な働き方に対応するため制度の見直しが行われ、社会保険の加入対象者の範囲が拡大することになりました。
改正により新たに加入対象者になる人は?
社会保険の加入にはいくつか要件があります。今回の法改正で変更となるのは事業所の企業規模要件と勤務期間要件の2つです。
事業所の企業規模要件
事業所の企業規模は現行の501名以上から2022年10月に101名以上になります。(2024年10月に51人規模に段階的に引き下げ予定)
勤務期間要件
勤務期間は1年以上の要件が撤廃され、2022年10月に、2カ月を超える期間に変わります。
契約上の期間が2か月となっていても、更新の可能性が明示されていれば「2カ月を超える見込みがあるもの」として取り扱います。
加入対象企業で働き、以下のすべてを満たす方は、短時間労働者であっても社会保険に加入することになります。
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 月額賃金が8.8万円以上
- 2か月を超える雇用の見込みがある
- 学生ではない(休学中や夜間学生は加入対象)
この改正によって新たに加入対象になる方は45万人と見込まれています。
社会保険加入のメリット
短時間労働者の方が社会保険に加入することで、どのようなメリットがあるのでしょうか。
老齢年金の充実
厚生年金に加入することで、国民年金の基礎年金額に加えて、支払保険料に応じた金額の年金(報酬比例部分)が生涯にわたって上乗せされます。
例えば年収106万円(月収8.8万円)の方が月額8,100円の厚生年金保険料を20年間納めた場合、上乗せされる年金額(概算)は、月額9,000円(年額108,300円)となります。
※年収106万円(月収8.8万円)の場合
加入期間 | 厚生年金保険料 | 増える報酬比例部分の年金額(目安) |
20年間加入 | 月額8,100円 | 月額9,000円(年額108,300円)×終身 |
10年間加入 | 月額8,100円 | 月額4,500円(年額54,100円)×終身 |
1年間加入 | 月額8,100円 | 月額450円(年額5,400円)×終身 |
厚生労働省 社会保険適用拡大特設サイトをもとにFPサテライト作成
1年だけの加入だと上乗せが少額のため、あまりメリットが感じられないかもしれませんが、加入期間が長くなるほど上乗せされる年金額は多くなります。
障害年金、遺族年金の充実
厚生年金保険の加入中に障害がある状態になると、障害等級1、2級の場合、障害基礎年金に加え障害厚生年金が上乗せされます。
3級やそれより軽い一定の障害の場合、国民年金は障害年金の支給がありませんが、厚生年金は障害厚生年金または障害手当金(一時金)の支給を受けられます。
また、万一、加入者が亡くなった場合も、遺族基礎年金に加えて遺族厚生年金が支給されます。
医療保険(健康保険)の充実
病院で医療を受ける際の医療給付は、基本的に健康保険の被保険者(本人)と被扶養者(扶養家族)で差はありません。しかし病気や出産などで仕事を休み報酬が得られなくなった場合、被保険者には傷病手当金や出産手当金として、賃金の3分の2程度が支給されます。
保険料を会社と折半できる
厚生年金保険料と健康保険の保険料は、労働者と雇用者が折半して支払います。
国民健康保険と国民年金を全額自分で支払していた方が社会保険に加入した場合、自己負担額が少なくなる可能性があります。
扶養基準(130万円)を意識せず働ける
現状では、扶養内で働いている方の年収が130万円を超えると、国民年金と国民健康保険の保険料負担が新たに発生していました。しかし傷病手当金などの支給は受けることができず、働く環境によって保障に差が生じていました。
厚生年金保険・健康保険に加入できるようになれば、保険料負担は106万円(月額8.8万円)から発生することになりますが、保険料は労使折半になるうえ、保障も充実します。
パートやアルバイトの方は、事業所の企業要件によっては、国民年金・国民健康保険加入となり、年金の上乗せ給付や健康保険による保障が確保されなかったり、保険料が労使折半されず全額自己負担になったりと、不都合が生じていました。
そのような方にとって社会保険の加入はメリットがあります。
社会保険加入のデメリット
一方で、気になるデメリットもあります。
手取りが減る可能性がある
最も大きなデメリットは、今まで扶養内で働いていた方などが、社会保険料を負担することで手取り収入が減ってしまうことです。
また、家族の健康保険の被扶養者だった方は保険料を払わずに医療給付を受けられていましたが、自分で社会保険に加入し健康保険の被保険者になると、保険料の支払が必要になります。
手取りを減らさないように現状より多く働き年収を増やすことができれば、社会保険の恩恵も受けつつ、従来の手取りを維持することができますが、子育てなどで時間が限られていて、簡単に勤務時間を増やせない方にとっては社会保険の加入がデメリットに感じるかもしれません。
社会保険に加入したくない場合
将来の年金や、病気の際に傷病手当金が給付されるのは助かるけれど、今の手取りを減らしたくない場合は、加入要件に当てはまらないように働き方の調整することで、加入を回避することができます。
まずは、社会保険に加入せずに働きたいことを雇用主に伝え、契約内容を相談しておくといいでしょう。
加入条件から外れるために、賃金月額を8.8万円以下にする、週の労働時間を20時間以内に抑える、従業員数が50人以下の企業で働くという方法があります。
しかし、社会保険の加入を避けるためだけに仕事の選択肢を狭めてしまうのは悩みどころですよね。
先に記したように社会保険加入による厚生年金の受給は一生涯続くものですし、これから先にケガや病気で収入が減る可能性もあるので、加入するかどうかは長期的にみて選択することが大切です。
加入を望まない場合は、将来のためにつみたてNISAや、iDeCo(個人型確定拠出年金)などで資産運用をしたり、万一休業することになっても生活できる貯蓄を持ったりしておくと良いでしょう。
ダブルワークの場合、条件によっては手続きが必要
掛け持ちしている2つの勤務先が社会保険の加入対象となった場合、両方の事業所で社会保険に加入することになります。各事業所が支払った報酬に応じた保険料の按分をしてもらうため、届出が必要です。
(健康保険についてはどちらか1つの事業所のみ。)
今までメインの会社でのみ社会保険料を納めていた方は、もう一方の勤務先が社会保険加入適用範囲になっていないか、確認してみましょう。
参考:日本年金機構 複数の事業所に雇用されるようになったときの手続き
このように、社会保険の加入は働く人の状況によっては、負担が増える側面もあります。
まとめ
今まで社会保険に加入せずにパートやアルバイト勤務をしている方にとっては、新たな社会保険の制度は手取りが減るというデメリットがあります。
しかし、老後にもらえる年金の額が増えたり、万一の際に手厚い保障を受けられたりするなど、将来的にはメリットとなる点も多いです。
社会保険加入の要件と、メリット・デメリットを知り、自分に合った働き方を見つけて頂けたらと思います。
一概に医療保険といっても、『どの保険を選べばいいかわからない』『保険の補償内容は何を基準に判断すればいいかわからない』などの疑問をお持ちではないでしょうか?
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