【FP監修】自損事故で保険会社とトラブルに?避けるための基礎知識
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車を運転していて電信柱にぶつけてしまったなど、物や自分の車を壊してしまったものの、他人を巻き込んではいない事故のことを自損事故といいます。
人を巻き込んでいないため「警察への届出は必要ないだろう」「自動車保険にも影響しないだろう」などと
考えていないでしょうか。
実は自損事故であっても適切に対処しないと、保険会社とのトラブルに発展する可能性もあるので注意が必要です。
本記事では、自損事故を起こした場合の警察や保険会社への対応に関する注意点と、補償に使える保険について解説します。
一概に保険といっても、『どの保険を選べばいいかわからない』などの疑問をお持ちではないでしょうか?
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自損事故とは?

「他人を巻き込まない、自分だけが損害を被る事故」のことをいいます。損害には身体へのケガや後遺障害、死亡が含まれます。
● 運転操作を誤り電柱やガードレールなどに衝突し、怪我を負った。
● 車ごと崖から転落し怪我を負った。
● センターラインをはみ出してしまい、停車中だった無人の対向車に衝突した。
● 走行中、落石が起こり、落ちてきた岩が車に衝突した。
もし、自損事故を起こしてしまったら?
自損事故を起こしてしまったら、どのような対応をしたらいいのでしょうか。
大まかな流れは以下の通りです。
- 負傷者の有無、周りの被害を確認
運転者や同乗者に怪我はないか、また周囲や車の被害状況を確認します。 - 二次被害を防ぐ危険防止措置の実施
事故の影響で車や衝突物の一部が破片となって飛散している場合も考えられます。後続車の通行の妨げにならないよう、危険防止措置を実施します。危険防止措置は道路交通法で定められた法律行為となるため、必ず実施しましょう。 - 警察へ届け出る
警察へ事故の状況を説明し、届出をします。詳細は後述します。 - 保険会社へ連絡する故
契約中の保険会社に事故の連絡をします。注意点は後述します。 - 病院へ受診
目立った外傷や自覚症状がない場合でも、念のため病院を受診しましょう。
本記事では、特に3,4の対応について詳しく説明します。
警察への届出の流れ
自損事故は人を巻き込まない事故であるため、ついつい警察への届出を忘れてしまいがちです。
しかし、自損事故であっても警察へ事故を報告する義務は存在します。
警察に届出をしないと、後述するトラブルの原因となってしまう懸念もあります。必ず届出を行いましょう。
届出といっても、特別難しいことをする必要はありません。
警察に電話をかけ、次の3つを伝えます。
● 事故を起こした場所と日時の報告
● 損害物がある場合はその内容と程度の報告
● 事故後、現場で行った安全確認措置の報告
警察に届出をしないと何が起こる?
仮に警察に届出をしなかった場合、何が起こるのか考えてみましょう。
道路交通法違反になる
たとえ自損事故であっても交通事故であることに間違いはありません。
交通事故である以上、警察への届出義務(道路交通法72条1項前段)があります。
届出をしないということは、この義務に違反しているとみなされます。3か月以下の懲役または5万円以下の罰金が科される点に注意しましょう(道路交通法119条1項10号)。
交通事故証明書が発行できない
警察に届出を行わない場合、事故の公的な証明となる「交通事故証明書」を発行してもらえません。
この交通事故証明書がないと、保険会社の補償を受けることができません。
事故が起きたときは車両を自費で修理するつもりで届出をしなかったものの、後になってやはり保険を請求したい場合などは、特に注意が必要です。
交通事故の届出が法律上の義務である以上、事故を起こしたその場で速やかに報告を行うようにしましょう。
なお、交通事故証明書の詳細は後述します。
損害賠償が受けられない
自損事故にもいろいろ原因がありますが、中には「未舗装の道路を走っていたら、スリップしてガードレールにぶつかった」など、自分だけの原因ではない事故もあります。このような場合でも、警察に届出をしていることが前提の手続きになります。届出をしていなければ損害賠償請求を行うことができません。
自損事故での保険の扱いについて

自損事故を起こした場合の保険の扱いについて確認していきましょう。
自損事故を補償する保険の種類
自損事故の補償には、次の保険が活用できます。
対物賠償責任保険
事故によって他人の所有する車や公共物を壊した場合に補償される保険です。
例えば、電柱に車をぶつけてしまい、電柱が曲がった場合、その修理費用を電柱の持ち主に支払わなくてはいけません。
この時、加入している対物賠償保険の内容に応じた保険金額が支払われます。
なお、対物賠償保険は「トラックにぶつかって、積み荷を全損させた」「車で店舗に突っ込み、しばらく営業できなくなった」など、損害額が大きい事故にも使えます。
このような事故の場合、数千万円から数億円の請求が発生する場合もあるので、対物賠償保険でカバーできるようにしておくと安心でしょう。
車両保険
事故によって自分の車が損害を受けた場合に補償される保険です。
例えば、バンパーがへこんだり、ドアやサイドミラーが取れてしまったり、塗装が剥げてしまった場合に、修理費用が補償されます。
自損事故保険
自損事故を起こした場合、運転者や同乗者がケガをする、もしくは最悪の場合には死亡するケースもあります。
自損事故保険は、自賠責保険などから保険金が支払われないときに、運転者や同乗者の死傷を補償する保険です。
補償される金額は保険商品によって異なりますが、死亡した場合の保険金は1,500万円、障害が残った場合はその程度に応じて50万円から2,000万円が支給されるのが一般的となっています。
搭乗者傷害保険
自損事故を起こすのは、運転者だけが車に乗っている場合とは限りません。
同乗者の怪我を補償するのが搭乗者傷害保険です。
運転席や助手席、車内の座席のどこに座っていても補償は受けられます。
家族や友人とドライブに行くなど、人を車に乗せる機会が多い場合は契約を検討してもいいかもしれません。
自損事故のケガにも健康保険は使える?
自損事故で怪我をし病院を受診する場合、健康保険は使えるのか、気になったことはありませんか?
結論から言うと、健康保険の利用は可能です。
健康保険は、労働者の業務外の病気やケガで医療機関を受診した場合などに保険給付を行い、国民の生活の安定および福祉の向上を目指すのが目的です(参考: 健康保険法1条)。
自損事故が仕事中に車を運転していて起きたものであれば、労災保険が適用されます。
一方で、業務外の全くのプライベートであった場合は、健康保険を使う余地は残っています。
もちろん、飲酒運転などの犯罪行為によって自損事故を起こした場合や、意図的に自損事故を起こして保険の適用を受けようとした場合は健康保険の適用も受けられません(参考:健康保険法116条)。
ただし、前述の搭乗者傷害保険に加入している場合、搭乗者傷害保険が適用される場合もあります。
自損事故について保険会社とのやり取りで注意すべき点

自損事故を起こし、保険会社とやり取りをする場合に注意しておきたい点について解説します。
等級が下がる
自動車保険では「等級制度」が用いられています。
等級制度とは、保険料の割増率・割引率を定めるための区分です。事故を起こさなければ等級が上がり保険料の割引率が上がりますが、事故を起こすと等級が下がり保険料の割引率も下がっていく仕組みです。
注意点として、自損事故を起こし保険金の給付を受けた場合、翌年の保険料が上がってしまう可能性があります。
どのくらい等級が下がるのかは、事故の種類によって異なります。
ここで代表的な例をみてみましょう。
● 事故を起こして人を怪我をさせた。
● 事故を起こして他人の所有する車や物を壊した。
● 電柱に車をぶつけ、車両保険金で修理代を支払った。
● 車が盗難された。
● 台風による洪水の影響で車が故障し車両保険金を請求した。
● 車に落書きやいたずらをされ、修理代を賄うため車両保険金を請求した。
自動車保険で保険金の給付を受ける場合は、等級と保険料がどのように変わるかについて必ず確認するようにしましょう。
交通事故証明書は必須
保険金の請求には、警察が発行する交通事故証明書が必要になります。
「交通事故を起こしました」という公的な証明である交通事故証明書には、次の内容が記載されています。
● 交通事故照会番号
● 事故の発生日時
● 事故の発生場所
● 交通事故の当事者の住所・氏名・生年月日
● 事故車両の車種・車両番号(ナンバープレートの番号)
● 加入している自賠責保険の番号と自賠責保険の窓口となる損保会社名
● 事故の種類(人対車両・車両相互正面衝突・車両単独転倒など)
事故を起こした本人(=加害者)、被害者、損害賠償請求権を有している親族、または、保険金の受取人になっている家族なら申請できます。
交通事故証明書は保険会社の担当者が取り付けるのが一般的ですが、自動車安全運転センターやウェブサイトから自分で取得することも可能です。
手続きについては、以下を参照ください。
- ゆうちょ銀行、郵便局での払込:証明書申込用紙を記入し、最寄のゆうちょ銀行・郵便局で手数料(1通800円)を添えて申込む。
- 自動車安全運転センター事務所窓口:窓口で、所定の用紙に記載した上で、手数料を添えて申込む。
- 自動車安全運転センターのホームページから申込む:所定の申請フォームに入力した上で、手数料をコンビニ、ネットバンク、金融機関(ペイジー)で払い込む。
保険金詐欺の疑いに注意
あまり考えたくない話ではありますが、事故の経緯によっては「保険金目当てでわざとやったもの」として、保険金詐欺の疑いをかけられることもあります。
この場合、保険金の受取りが難しくなる点に注意しましょう。
交通事故で保険金を請求する場合、保険会社の担当者との打ち合わせを重ねます。
事故の経緯についてはメモにまとめる、事故現場の写真を記録しておくなどして、何を聞かれても的確に答えられるようにしておきましょう。
どんな事故であっても、保険会社は請求が正当であるかどうかを判断するために調査を行います。
調査には時間がかかりますが、あまりにも遅いと感じたり、支払わないという回答がきたりしたら、どういう経緯でその結論になったかをしっかり確認しましょう。
もし、やり取りの中で保険金詐欺の疑いをかけられていたとわかったなら、弁護士に相談し訴訟も含めて対応を行うなど、法的手段も視野に入れる必要があります。
トラブルになったら弁護士に相談しよう
トラブルになりそうと感じたら、弁護士に相談しましょう。
保険金の支払いにあたっては、「逸失利益」が重視されます。
ただし、保険商品の約款に示されている計算方法が曖昧なことも珍しくありません。
中には、保険会社の解釈で自由に内容を決めている場合もあるので、正当な逸失利益を保険金に反映してもらえるように交渉しましょう。
この際、正確な金額を精査する必要が出てきます。「何かおかしい」と思った時点で、すぐに弁護士に相談してみてください。
弁護士にもそれぞれ得意分野があるので、交通事故に精通した弁護士に相談するのがおすすめです。
日本弁護士連合会では、自動車事故に関する専門の相談センターを設けています。
弁護士による無料の電話相談も受付けているので、変だと感じたときは、一度相談してみましょう。
自損事故の対応を知って、トラブルを避けよう
自損事故を起こした場合の対応について、主に警察や保険会社とのやりとりで注意すべき点を解説しました。
自損事故とはいえ、同乗者に怪我をさせてしまったり、他人の車や物を壊してしまったりした場合は、損害保険の補償を利用するのが望ましいです。
しかし、自分の車だけを修理した方が出費が安く済む場合は、あえて保険を使わないという選択もあります。
保険金を受け取ると等級が下がり、翌年からの保険料が上がる可能性が高いからです。
保険を請求する際は、修理代と翌年からの保険料のバランスを考えて進めていきましょう。
もちろん保険をしない場合でも、警察への届出は義務ですので、忘れないようにしてください。
一概に保険といっても、『どの保険を選べばいいかわからない』などの疑問をお持ちではないでしょうか?
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参考:
承認番号:24-DS-070(2027/12/17)
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