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事故などを起こす前に理解しておきたい「過失割合」とは?

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なんとなく知ってはいるものの、よくわからない点が多いのが、交通事故などの際に問題となる「過失割合」です。「過失割合」は誰がどのように決めており、「過失割合」によってどんな影響があるのか。また、「過失割合」について事故の相手ともめてしまった場合の対応など、あらかじめ疑問を解消しておきましょう。

過失割合とは

過失割合という言葉は耳にするものの、当事者とならなければ、あまり深く関わることはないかもしれません。しかし事故は、いつ、誰の身に起きるか分からないもの。まずは過失割合について、基本的な知識をおさらいしておきましょう。

交通事故における過失割合とは

交通事故における過失割合とは、「交通事故の加害者と被害者がそれぞれ、その事故についてどのくらいの割合で責任を負うのか(悪いのか)」をいいます。たとえ被害者であっても全く責任(過失)がないわけではなく、被害者側の責任を問われることが少なくありません。

交通事故の被害者は、事故によって生じたケガの治療費や自動車の修理代、人が亡くなったり後遺障害が残ってしまったりした場合の慰謝料などを、損害賠償として加害者に対して請求することができることになっています。このとき被害者側に過失割合があれば、その分だけ「過失相殺」という仕組みによって損害賠償額が減額されてしまうのです。そのため、過失割合はとても重要なものだといえるでしょう。

過失割合は誰が決めているのか

では、損害賠償額にも影響し、重要な意味を持つ過失割合は誰が決めているのでしょうか。結論から言えば、それは「保険会社」です。

交通事故が発生した場合には、被害者側の保険会社と加害者側の保険会社が話し合いによって示談交渉を行うことが一般的です。示談交渉の中心は「いくらの損害賠償金でお互いが納得するか」ということであり、その話し合いのなかで過失割合についても決められます。

よく警察が過失割合を決めていると思われがちなのですが、民事不介入という原則によって、示談交渉における過失割合の決定に警察は直接関与しません。ただし事故の状況や原因を記した警察の調書は、過失割合を決定するための重要な資料となるため、全く無関係ともいえないでしょう。事故で気が動転していて、信号が何色だったかなど記憶があいまいに答えたことが過失割合の決定に不利に働いてしまうこともあります。そのため、警察による実況見分には、冷静になってしっかり対応することが大切です。

過失割合は何を基準に決めるのか

過失割合は最終的に、保険会社が提示した過失割合に被害者側・加害者側の双方が合意することで決まります。しかしながら、保険会社のさじ加減だけで過失割合が決められてしまっては根拠が曖昧で、納得しにくいものでしょう。また保険会社としても、毎日数多く発生する事故に対して1件ずつ過失割合を決めていくのは現実的ではありません。そこで過失割合の関する過去の判例がまとめられた「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」が客観的な基準として利用されます。保険会社はこの基準に実際の事故の状況を当てはめて過失割合を決めています。ただし全く同じ事故はないので、最終的には保険会社が決めなければならない部分もでてきます。そのため提示された過失割合が絶対だというわけではなく、もし納得できない点があれば、その点はしっかりと主張しなければなりません。場合によっては弁護士など、専門家へ相談することも考えましょう。

過失割合に影響を与える要因

交通事故における過失割合は、まず事故の形態、その事故が起こった状況によって大まかに決まります。そのうえで、速度違反や携帯電話の使用や飲酒運転、無免許運転など、運転者の過失の有無によって過失割合が修正され、その事故における過失割合が決まることになるのです。

なお、ケガや自動車の破損の程度などは、過失割合の決定に影響しません。そのため、過失割合の大きい加害者側の方が重傷である場合もあります。

こんなときには、過失割合はどのようになるの?

では実際の事故で、過失割合はどのようになるのでしょうか。ここでは自動車(四輪車)同士の主な事故形態における過失割合についてみてみましょう。

信号機のある交差点での事故

  1. 青信号車Aと赤信号車Bの出会い頭事故
    【基本となる過失割合】A 0 : B 100
    このケースでは基本的にAに過失割合はないとされます。ただし赤信号のBが明らかに先に交差点に進入しているにもかかわらず、Aが信号だけをみて交差点に進入したような場合にはAの過失割合に10加算されます。また酒酔いなどの重過失があれば過失割合に20加算されます。
  2. 黄信号車Aと赤信号車Bの出会い頭事故
    【基本となる過失割合】A 20 : B 80
    このケースでは、Aが赤信号に変わる直前に交差点に進入し、直後に赤信号に変わった場合にはAの過失割合に10加算されます。また、衝突時にはBの信号が青だった場合には、Aの過失割合に20加算されます。
  3. 赤信号車同士の出会い頭事故
    【基本となる過失割合】A 50 : B 50
    どちらにも赤信号無視という重大な過失があるため基本的には過失割合は等しくなります。Bが明らかに先に交差点に進入しており、Aが後から交差点に進入して衝突した場合には、Aの過失割合に10加算されます。
  4. 直進車Aと右折車B(共に青信号)の事故
    【基本となる過失割合】A 20 : B 80
    Aが交差点進入時に既にBが右折していた場合などにはAの過失割合に10加算されます。一方Bがウインカーを出さずにいきなり右折した場合などには、Bの過失割合に10加算されます。
  5. 黄信号で交差点に進入した直進車Aと青信号で交差点に進入後黄信号で右折した右折車Bの事故
    【基本となる過失割合】A 70 : B 30
    交通量の多い交差点ではよく発生する状況ですが、この場合Bは信号違反ではないものの対向車の確認不足として過失割合は30とされます。

信号機のない交差点での事故

  1. 同幅員道路(一時停止標識なし)における左方車Aと右方車Bの出会い頭の事故
    【基本となる過失割合】A 40 : B 60(A・Bが同程度の速度)
    この場合には、運転手から向かって左から右へ進行する左方車Aが優先とされ、どちらも同じ速度で交差点に進入した場合には、Aの過失割合が低くなります。もしどちらかが交差点前で減速していれば、減速しなかった側の過失割合に20加算されます。
  2. 同幅員道路における左方車Aと右方車B(一時停止標識あり)の出会い頭の事故
    【基本となる過失割合】A 20 : B 80(A・Bが同程度の速度)
    この場合には、一時停止義務のあるBの過失割合が高くなりますが、Aの過失割合も20認められます。もし交差点進入前にどちらかが減速していれば、減速しなかった側の過失割合に10加算されます。また、Bが一時停止後に交差点に進入して事故が起こった場合には、過失割合はA 40 : B 60となります。
  3. 一方が明らかに幅員の広い道路における広路車Aと狭路車Bの出会い頭の事故
    【基本となる過失割合】A 30 : B 70(A・Bが同程度の速度)
    この場合には、道幅の狭い側のBの過失割合が高くなります。ここでも交差点進入前にどちらかが減速していれば、減速しなかった側の過失割合に10加算されます。
  4. 一方が優先道路であるときの優先車Aと劣後車Bの出会い頭の事故
    【基本となる過失割合】A 10 : B 90
    標識での指定やセンターラインが引かれていることで優先道路とされる道路を走行する車Aと優先道路ではない道から進入したBとの事故では、Bの過失割合が高くなります。Aには徐行義務がないため、Bが減速して進入した場合にも、過失割合には影響しません。

直進路での事故

  1. 追突事故(駐停車中のAに後方からBが追突した場合)
    【基本となる過失割合】A 0 : B 100
    このような追突事故では、追突されたAには過失はないとされます。もしAが急ブレーキをかけたために追突事故が起こった場合であっても、それが危険回避のためやむを得ない場合には、Aには過失がないとされます。ただしAが理由なく急ブレーキをかけたことで事故が発生した場合には、Aにも過失があり、Aの過失割合は30となります。また駐停車禁止場所での駐停車やハザードランプなどをつけずに駐停車していた場合には、Aにも10〜20程度の過失割合が認められます。
  2. 直進車Aとセンターオーバーした対向車Bとの事故
    【基本となる過失割合】A 0 : B 100
    この場合には、基本的にはセンターオーバーしたBに一方的な過失があるとされます。ただし道路状況などによって、Aの過失が認められる場合もあります。
  3. 直進車Aと路外から進入するために左折してきた左折車Bとの事故
    【基本となる過失割合】A 20 : B 80
    道路脇の駐車場から出るときなどによく起こる事故の形態です。このとき、Bが駐車場から道路に頭を出して待機していた場合には、Aの過失割合に10加算されます。一方でBが徐行せずに進入してきた場合には、Bの過失割合に10加算されます。

被害者にも責任がある場合の「過失相殺」とは

過失割合による損害賠償額の調整「過失相殺」

交通事故の被害者は加害者から損害賠償を受ける権利があります。その損害賠償の金額は「交通事故損害額算定基準」(通称・青本、公益財団法人 日弁連交通事故相談センター本部発行)や「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」(通称・赤い本、公益財団法人 日弁連交通事故相談センター東京支部発行)などをもとに、事故ごとの事情を考慮したうえで加害者側の保険会社から提示されます。

このとき被害者側の過失割合が0でなければ、算定した損害賠償額は過失割合を考慮した調整が行われます。これを「過失相殺」といいます。損害賠償については、当事者の双方に責任がある場合には、本来であれば加害者側と被害者側のそれぞれが相手に対して損害賠償金の支払う義務を負います。ただ、結局は加害者側がより多くの損害賠償額を支払うことになるため、実際にはこの「過失相殺」の方法により、加害者側と被害者側の損害賠償額の差額分を加害者側から支払うことが一般的となっています。

ここで被害者側に過失割合があり、損害賠償額の合計が300万円であった場合を例にみてみましょう。この場合、被害者となった側が実際に加害者側から受け取れる損害賠償額は、以下のようになります。

  1. 過失割合 90:10 の場合
    被害者に支払われる損害賠償額=300万円×(100-10)%=270万円
  2. 過失割合 50:50 の場合
    被害者に支払われる損害賠償額=300万円×(100-50)%=150万円
    このように、過失割合によって支払われる損害賠償額は大きく変わり、本来の損害賠償額が高額であるほどその影響は大きくなります。

自賠責保険には「過失相殺」は適用されない?

被害者側にも過失がある場合には、過失割合によって過失相殺が適用され損害賠償額が減額されるのが原則です。ただし自賠責保険においては、被害者保護のため被害者に「重大な」過失があった場合のみ損害賠償額が減額されるという特例があります。この特例により被害者側の過失割合が7割未満の場合には、自賠責保険から支払われる損害賠償額は減額されないことになっています。また、被害者側の過失割合が7割を超える場合にも、厳密な過失相殺ではなく以下のような一定割合の減額にとどまります。

<傷害にかかるもの>

  • 被害者の過失割合/7割以上10割未満:2割減額

<後遺障害・死亡にかかるもの>

  • 被害者の過失割合/7割以上8割未満:2割減額
  • 被害者の過失割合/8割以上9割未満:3割減額
  • 被害者の過失割合/9割以上10割未満:5割減額

相手側ともめた場合、どうすればいいのか

過失割合が少し違ってくるだけで、支払われる損害賠償額に大きな差が生じてしまいます。被害者側としてはなるべく過失割合を低く認めてもらい、十分な補償を受けたいと思うでしょう。一方で加害者側、特に実際に保険金を支払うことになる加害者側の保険会社は、なるべく支払う損害賠償額を抑えたいと考えます。そのため、被害者の過失割合を高くしようとするのは必然です。

こうした背景から、示談交渉では過失割合についてもめることがよくあります。ではそのような場合、どうしたらいいのでしょうか。

まずは当事者(保険会社)同士の示談交渉での解決を目指す

示談交渉では、お互いが自分にとってより有利な条件で合意するために話し合いを行っています。一方で、なるべく早期に解決したいという思いもあるでしょう。特に人身事故の場合、加害者は損害賠償という民事責任だけでなく、刑罰を受ける刑事責任を負っています。そしてこの刑事責任に対する処分を決定する際に、被害者との示談が成立していることは有利に働きます。そのため、加害者側にとっては損害賠償の面で多少不利な条件であっても、早期に示談に応じるメリットがあるのです。このように当事者双方にとっての落とし所を見出し、まずは示談での解決を目指します。

示談交渉がまとまらない場合には、弁護士などの専門家へ相談

当事者・保険会社同士の話し合いで示談交渉がまとまらない場合などには、弁護士など専門家である第三者へ相談しましょう。公益財団法人交通事故相談センターなど、交通事故に精通した弁護士に無料で相談することのできる機関もあります。

また、保険会社同士に交渉を任せきりにしていると、本人が納得しないまま保険会社間で過失割合が決まってしまうこともあります。最終的な示談の条件に納得できない場合にも弁護士などへ相談し、条件が妥当なものかを改めて確認することも大切です。

できれば避けたい交通事故での裁判

示談交渉で折り合いがつかない場合、交渉は裁判所に持ち込まれます。裁判所では、まず第三者である調停委員を交えて「調停」という話し合いの場が設けられます。調停によって決着がつけば、合意された条件に裁判の判決と同様の法的な拘束力が認められ、その後、加害者が支払いを拒んだような場合にも強制的に支払いを求めることが可能です。ただし、今まで示談交渉で何度も話し合いを重ねた結果として合意できなかったことを踏まえると、調停での解決は難しいのも事実となっています。

調停での話し合いがまとまらない場合には、裁判所に最終的な判断を促す「裁判」となります。裁判を行えば決着はつくのですが、そのためには多くの時間とお金が必要です。そして、裁判をするからには勝たなければ意味がありません。もし裁判で負けてしまうと、裁判費用などは負けた側の負担となります。そのほか、示談に応じていれば受け取れたはずの損害賠償金についても、全く受け取れなくなることも考えられるでしょう。つまり裁判するとは、それだけの覚悟が必要となるのです。また、裁判に勝つためには、弁護士など専門家の力も当然必要となってきます。

自分の過失割合が0(もらい事故)の場合の示談交渉

赤信号で停車中に後ろから追突されたような場合、被害者側の過失割合は0となります。過失割合が0であれば、被害者側の保険会社に損害賠償を支払う義務が生じません。そのため、被害者に代わって示談交渉を行うことはできないのです。すると、被害者自身で加害者側の保険会社と損害賠償についての交渉を行うことになります。

このとき過失割合について争いはありませんが、被害者が交渉に不慣れなことから、相場よりも低い金額で示談を要求されることがあるでしょう。相場より低いことに気づけばまだいいのですが、実際のところ、相場をよく知らない、提示された金額で示談に応じてしまっているケースも少なくありません。また、相手が無保険で、交渉に応じてくれない場合もあります。このような場合、スムーズに示談交渉を行い正当な補償を受けるためにも、弁護士など専門家の力を借りることが必要です。

自動車保険の弁護士費用特約

もらい事故での示談交渉などを弁護士に依頼する、あるいは示談がまとまらず調停や裁判となった場合には、弁護士費用や訴訟費用などが必要です。自動車保険には、これらの費用を補償する「弁護士費用特約」が用意されています。

弁護士費用特約や日弁連交通事故相談センターによるサポートなどを活用すれば、弁護士への相談料など費用面でのハードルが下がり、より有利に示談交渉に臨むことも可能となるでしょう。また、示談交渉がまとまらず調停・裁判となった際にも、弁護士費用特約は力強いサポートとなります。

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