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【FP監修】高齢化社会で認知症の高齢者が身近に?地域のサポートで高齢者を支える

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認知症は、年齢を重ねるごとに発症する確率が高くなるといわれています 。日本では高齢者が増えており、認知症発症者数も増えていくと予想されています。

両親や知人など身近な人が高齢になると、介護の問題、特に認知症の介護に不安を感じるかもしれません。しかし、事前にどんなサポートがあるか知っておくと、介護の選択肢が増える可能性もあります。この記事では、認知症の高齢者に関わる問題を整理し、それに対して国や自治体が講じている対策を解説します。

この記事でわかること
  • ●今後、認知症の高齢者が身近な存在になるという予測
  • ●認知症の高齢者介護の問題が表面化、対策が必要
  • ●国の主導で認知症の高齢者が安心して暮らせる社会を目指す
  • ●国の方針にもとづき、自治体が高齢者を支援

認知症の高齢者が増える影響とは?

認知症を発症すると、判断能力の低下や記憶障害が起こる可能性があり、生活のサポートが必要になります。日常生活に支障が出るようになると、介護職のサポートや、家族の介護が求められます。その結果、介護職の不足や、在宅介護特有の問題などが増える可能性があります。

介護職が不足する可能性

内閣府発表の「令和5年版高齢社会白書」によると、これからも高齢化社会が進むと予測されます。年齢を重ねるごとに、認知症発症者数の割合が高くなる傾向にあるため、認知症発症者数も増えていくと予想されます。

人口の中で高齢者の割合が増えていくことは、若い人の割合が減っていくことでもあります。つまり、増える認知症の高齢者を少ない人数でサポートしなければならなくなっていきます。

なお、同資料で介護職の求人が増加しており、既に介護職は不足し始めているとも考えられます。今後は、介護をプロだけに頼るのではなく、社会全体として認知症の高齢者を受け入れる必要性があるといわれています。

参考:内閣府 令和5年版高齢社会白書(https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2023/zenbun/05pdf_index.html)2ページから4ページ、35ページ

在宅介護特有の問題とは?

介護を受ける人や家族の希望により、在宅で介護をする場合があります。また、施設入居を希望していても、空き状況によっては在宅介護をせざるを得ないかもしれません。

同居人数が少ないなどの理由で特定の人が在宅介護を行うと、介護者の負担が大きくなります。特に、子育て中の人や仕事をしながら介護をする人の負担は、とても大きくなるのではないでしょうか。

また、在宅介護は家庭内のこととされ、表面化しにくい問題でした。近年では高齢者の介護は、社会問題と受け止められるようになり、改善が模索されるようになってきています。

例えば、高齢者の夫婦間で配偶者の介護を行う「老老介護」、未成年者が日常的に介護を行う「ヤングケアラー」などの問題です。老老介護では、体力が衰えた高齢者が介護をするため、介護者に何かあったときに共倒れになる危険があります。

ヤングケアラーは、介護の負担の大きさから十分な教育を受けられないことが問題となっています。また、ヤングケアラーは同世代と過ごす時間も少なく、友人関係の構築にも影響があるともいわれています。

このような問題から、介護を家庭の中の問題とせず、社会全体で請け負う方法が模索されるようになりました。

認知症対策の方針を示す「新オレンジプラン」

厚生労働省は、社会全体で介護を行う仕組みを作るため、関係省庁と共に「新オレンジプラン」というサポート方針をまとめました。新オレンジプランでは、認知症は身近な病気であると位置付け、認知症の人が住みやすい環境を整えることを目指しています。

この目標を実現するため、次の7つの柱が示されました。

  • ●普及・啓発
  • ●医療・介護等
  • ●若年性認知症
  • ●介護者支援
  • ●認知症など高齢者にやさしい地域づくり
  • ●研究開発
  • ●認知症の人やご家族の視点の重視

7つの柱を簡単にまとめると、認知症の人が安心して暮らすためのサポート・介護する人のケア・医療介護サービスの向上です。

参考:厚生労働省 新オレンジプラン(https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/nop1-2_3.pdf

認知症対策の自治体の役割

自治体は、新オレンジプランをもとに、プラン実現のための環境を整える役割を果たします。中でも、認知症発症者や介護者の身近な存在になるのが、「地域包括支援センター運営」と「認知症サポーター養成講座の開催」です。それぞれを解説します。

●地域包括支援センター運営

地域包括支援センターは、自治体が主体となって設置している認知症の支援センターです。認知症に関わる相談の総合窓口のような存在で、保健師、社会福祉士、主任ケアマネージャーなどが対応にあたります。相談内容は介護サービスの利用、成年後見制度の利用、介護者のケアなど、多岐にわたります。相談内容によっては専門性の高い機関と連携したり、紹介したりすることもあります。

地域包括支援センターは、認知症を発症した人や、介護をしている人、介護職の人が利用できます。認知症の介護で困ったことや悩みなどがある人は相談してみてはいかがでしょう。

なお、サポートは認知症を発症した人が住んでいる地域のセンターが行います。介護者と認知症の人が別居している場合、介護者が住んでいるエリアのセンターではない点に注意しましょう。

●認知症サポーター養成講座の開催

認知症サポーターは、認知症やその家族の手助けをする人のことです。住み慣れた地域に住み続けるための施策の1つで、「認知症サポーター養成講座」を受講した人が活動します。自治体はサポーター希望者に認知症について理解を深めてもらうよう、養成講座を行います。

ただ、全国的に見ると十分な人数が確保できていないのが現状で、これからどう増やしていくか検討している自治体もあります。また、地域住民だけではなく、定期的に訪問する業者などもサポーターとして期待している自治体もあります。

この2つ以外にも、認知症の高齢者が元気で住みやすい環境を整えるため、独自の取り組みをしている自治体もあります。例えば、高齢者が楽しく参加できる機会を作れるよう、有酸素運動、学校訪問、ゲームなど高齢者向けのイベントを開催するなどの取り組みです。

社会で介護をすると、家庭の負担はなくなる?

国や自治体が認知症のサポートを行っているものの、家庭の負担がゼロになるわけではありません。介護にはある程度資金が必要になりますし、介護の負担によっては仕事の調整が必要になるかもしれません。

公益財団法人生命文化センターの調査結果によると、高齢者の介護にかかった平均費用は在宅で月額4万8,000円、施設入居で月額12万2,000円です。この金額が介護の期間中続きますので、介護費用に備えてお金を準備しておくと安心です。また同資料によると、介護用品の購入やリフォームのため、介護初期に平均74万円もかかっています。

お金の準備は、預貯金で貯めていく方法や、退職金の一部を残しておく方法、保険を利用する方法などがあります。認知症や介護に利用できる民間保険は、認知症保険や、介護保険です。この2つは保障が受けられる条件が異なり、認知症保険は認知症と判断された時、介護保険は保険会社の所定の介護状態になった時に保障が受けられます。

なお、預貯金で資金を準備する場合は、認知症になると自分の口座から現金を引き出すことが難しくなるため、元気なうちにその対策も必要です。特定の人に財産管理を任せる「任意後見制度」や「家族信託」を利用するなどの対策も検討しておくのも1つの方法です。

参考:公益財団法人生命文化センター「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査」(https://www.jili.or.jp/research/report/8361.html)173ページ、174ページ

事前の情報収集で介護の対策を

高齢化が進む日本では、高齢者の人口増加とともに、認知症発症者の増加が懸念されています。

政府は、認知症が身近な存在になるととらえ、地域社会でサポートする体制を整える方針を打ち出しました。この方針では、実際のサポートは自治体が行うことになっており、体制を整えている段階です。

今後、身近な人が認知症になるかもしれません。そのとき落ち着いて対処できるよう、事前にどのようなサポートがあるか確認し、資金の準備もしておくのも対策の1つではないでしょうか。

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