【FP監修】2022年10月 雇用保険料率と75歳以上の医療費負担割合が引き上げに!知っておくべき変更点とは
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2022年10月から、さまざまな法律・制度が改正になりましたが、私たちの生活に直接関係する「雇用保険」の保険料負担が増えることや75歳以上の「後期高齢者医療制度」において医療費負担の割合が引き上げられることをご存じですか?
新型コロナウイルスによる影響や円安の加速により、モノ・サービスの値上げが続く現状で、保険料負担の増加は家計にどう影響するのでしょうか。
本記事では、雇用保険料率の引き上げと、後期高齢者医療費負担の引き上げについて解説します。
雇用保険料率の引き上げについて
雇用保険料率の引き上げとは、どういった内容なのでしょうか。
まずは雇用保険の基本的な概要から見てみましょう。
雇用保険とは
雇用保険は、政府により義務付けられた公的保険制度です。
労働者の生活と雇用の安定、就職促進を目的とした給付金の支給や、労働者の能力開発・福祉の増進を図る雇用保険二事業を実施しています。
加入条件
下記に該当する場合、労働者は雇用保険の被保険者となります。
(昼間学生など例外を除く)
- 雇用期間が31日以上見込まれること
- 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
給付内容
雇用保険の給付金は失業時のほか、育児や介護の休業時などでも支給されます。
- 求職者給付 :失業時の基本手当金(失業手当)や傷病手当金など
- 就職促進給付:就業手当や再就職手当など
- 教育訓練給付:指定の教育訓練を修了した際の教育訓練給付金
- 雇用継続給付:高年齢雇用継続給付金や介護休業給付金
- 育児休業給付:育児休業取得者の育児休業給付金
雇用保険といえば失業手当というイメージがあるかもしれませんが、雇用保険には雇用継続給付のように、就業と家庭生活の両立を支援するような給付もあるので、在職中でも制度を利用する機会があります。
保険料納付
保険料は労働者と事業主で負担率が異なり、毎月の給与に応じて計算されます。
雇用保険料率引き上げについて
では、どのくらい引き上げられるのでしょうか。
今回の引き上げは、労働者、事業主の保険料のうち「失業等給付・育児休業給付」に該当する部分です。
図1.雇用保険料率の変更表(一般の事業の場合)
令和4年度雇用保険料率のご案内(厚生労働省)PDFをもとにFPサテライト作成
これにより一般事業者の場合、9月まで「労働者負担0.3%+企業負担0.65%=0.95%」であった雇用保険料が、10月からは「労働者負担0.5%+企業負担0.85%=1.35%」まで引き上がります。
例えば、1か月の計算対象賃金が30万円だとすると、9月までは労働者負担の雇用保険料は900円ですが、10月以降は1,500円になります。
引き上げの理由
今回の引き上げは、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、雇用調整助成金の給付が増えたこと、また一時的に失業率が上がったことなどが要因です。
雇用調整助成金は、事業主が労働者に支払う休業手当を、国が一部補填する制度です。
コロナ禍で助成金を申請する企業が増え、支給決定額が累計6兆円(2022年8月26日時点)を超えるなど、雇用保険財政を大きく圧迫しました。
雇用調整助成金(新型コロナ特例)支給実績 (厚生労働省)
こうした状況を是正し今後のコロナ情勢に対応していくため、雇用保険料率が引き上げられることになったのです。
雇用保険は、他の社会保障に比べると給与から差し引かれる金額が少ないため、普段は意識しにくいかもしれません。
しかし家計管理をするうえでは、例え少額でも手取りの増減を把握しておく必要があります。
今後の保険料率はどう推移していくのか、注視しておくとよいでしょう。
後期高齢者医療費負担割合の引き上げについて
続いては、75歳以上が対象の後期高齢者医療費負担割合の引き上げについて見ていきましょう。
後期高齢者医療制度とは
後期高齢者医療制度は75歳以上の方(一定の障害がある方は65歳以上)が加入する公的医療保険です。
運営は都道府県単位の広域連合と市区町村とが連携して行います。
加入対象
- 75歳以上の方(75歳の誕生日当日から資格取得)
- 65歳以上74歳以下の方で、一定の障害があると認定された方(認定日から資格取得)
保険料
納付する保険料は世帯の人数や収入で異なり、年金からの天引きか納付書で支払いを行います。
75歳以上の医療費引き上げについて
これまで、後期高齢者医療制度の医療費自己負担割合は、現役並み所得者を除き原則として1割でした。
後期高齢者の医療費は、窓口負担(自己負担)を除いた約4割を現役世代が負担する仕組みで成り立っています。
2022年度以降、いわゆる「団塊の世代」が後期高齢者となりはじめるため、後期高齢者の医療費が増えていくことが予測されています。
そのため、現役世代の保険料負担が増えないよう、後期高齢者医療制度の対象者のうち、一定の所得がある方は医療費負担割合を2割にすることになりました。
現役並み所得者は現行の3割、一般所得者等は1割で変更はなく、所得に応じて1割、2割、3割負担と3つに区分されることになります。
2割負担の対象者は?
2割負担の所得基準は、世帯内の75歳以上の方のうち、以下の所得層となっています。
"課税所得が28万円以上かつ「年金収入 +その他の合計所得金額※4」が単身世帯の場合200万円以上、複数世帯の 場合合計320万円以上
※4 「その他の合計所得金額」とは、事業収入や給与収入等から、必要経費や給与所得控除等 を差し引いた後の金額のことです。 "
引用:後期高齢者医療の窓口負担割合の見直しについて(厚生労働省)
「年金収入」とは、公的年金から控除金額を差し引く前の金額です(遺族年金や障害年金は含みません)。
窓口負担割合が2割となるかどうかは以下の流れで判定します。
出典:後期高齢者医療の窓口負担割合の見直しについて(厚生労働省)
医療費の負担を抑えるには?
引き上げの対象となる方の中には、医療費が倍になるのではと困惑されている方もいらっしゃるかもしれません。
しかし今回の改正では、配慮措置が設けられているほか、高額療養費制度を利用することで、医療費の負担を一定額で抑えることができます。
配慮措置
2022年10月1日から2025年9月30日までの期間、2割負担の対象者は、外来医療の自己負担増加額を、1か月あたり上限3,000円までとすることができます。
図2.後期高齢者医療費2割負担のイメージ
後期高齢者医療の窓口負担割合の見直しについて(厚生労働省)をもとにFPサテライト作成
高額療養費制度
1ヵ月(1日から月末まで)にかかった医療費の自己負担額が高額になった場合、一定額(自己負担限度額)を超えた分が、払い戻される制度です。
自己負担限度額は、加入者が70歳以上かどうかと、所得水準によって分けられています。
出典:厚生労働省保険局 「高額療養費制度を利用される皆さまへ 」
区分が「一般」に該当する方は、個人ごとの外来の上限額は18,000円、世帯ごとの入院も含めた上限額は57,600円です。
入院時の差額ベッド代や食事代などは対象外ですが、この制度を利用すれば、高額な医療費に慌てることなく安心して医療を受けることができるのではないでしょうか。
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