【FP監修】 話題の児童手当、どんな仕組み?どう変わるの?
- 子 供
2023年6月13日に「こども未来戦略方針」が発表され、児童手当改正の方針も盛り込まれました。児童手当の改正は子育て世帯の注目が大きく、メディアでも取り上げられています。
この記事では話題の児童手当がどのような制度なのか整理したいと思います。
- ・児童手当はこどもの育成に関わる経済的なサポート
- ・児童手当の受取額はこどもの年齢・人数などによって変化
- ・子育てしている人の所得によっては受取れない場合も
- ・児童手当改正で受取期間が伸びるが、注意点も
現在の児童手当
児童手当はこどもがいる家庭の生活の安定と、こどもの成長のために経済的なサポートをすることを目的にしています。この目的を達成するために、中学卒業までのこどもがいる家庭に給付されています。
児童手当を受取れる人は?
児童手当は、0歳から中学卒業までのこどもを育てている人に給付されます。父母が受取るケースが多いのですが、祖父母が育てている場合は祖父母に給付されます。なお、こどもが施設で過ごしている場合は、施設の経営者などが対象となります。
ただし、中学生までのこどもがいても、所得によっては受給対象から外れてしまう場合があります。詳細は「児童手当の所得制限とは」の章をご覧ください。
児童手当の受取額
受取れる児童手当の金額は、こどもの年齢や人数によって変わります。内閣府の児童手当のページによると、受取額は次のようになります。
表1 児童手当の支給額
こどもの年齢 | こども1人当たりの給付額 (1ヵ月あたり) |
---|---|
3歳未満 | 1万5,000円 |
3歳以上 小学校卒業まで |
1万円 (第3子以降は1万5,000円) |
中学生 | 1万円 |
内閣府 児童手当制度のご案内をもとに作成
なお、この表の第3子の意味は「3番目に生まれたこども」ではありません。「高校生以下のこどもを上から順に数えて3人目以降」という意味ですので、注意が必要です。
例を使って説明します。
児童手当の第3子にあたるケース
例:長男(高校生)、次男(中学生)、三男(小学生)
この場合は長男が高校生なので、長男を第1子、次男を第2人子、三男を第3子と数えます。
児童手当の第3子に当たらないケース
例:長男(大学生)、次男(中学生)、三男(小学生)
この場合は、長男が高校を卒業しているので、次男から数えます。次男を第1子、三男を第2子と数えます。長男の高校卒業と同時に、三男は第3子から第2子に変わるのです。
児童手当の所得制限とは
児童手当の受取額は、こどもを育てている人の所得によって先ほどの表より少なくなる場合があります。受取額が5,000円になる場合や、全く受取れなくなる場合があるのです。
なお、世帯の中で収入のある人が複数いる場合は、こどもを育てている人の所得の多い人で判断します。ですから、正社員と兼業主婦(夫)であれば正社員の所得、共働きであれば多い方の所得で判断します。
2つの所得制限
児童手当の受取額は所得によって区切りとなる金額が2つあります。その2つがこちらです。
所得制限限度額
表通りの金額を受取れるか、5,000円になるかの境界です。所得制限限度額未満であれば、表の金額通り受取れます。
所得制限上限額
5,000円を受取れるか、まったく受取れないかの境界です。所得制限限度額以上、所得制限上限額未満であれば5,000円を受取れます。所得制限上限額以上だと給付がなくなります。
所得制限の影響受ける?
所得は収入が同じでも、家族構成などによって変わります。
児童手当で使われる所得の調べ方
まず、ご自身の所得額を調べてみましょう。児童手当の受給額を判断する所得額は、所得税の申告方法によって、次の方法で計算できます。
- ・確定申告の場合は「所得金額の合計」から「控除額」と8万円を引く
- ・給与所得者の場合は、源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」から「控除額」と18万円を引く
「控除額」は、法律で決まっているもので、雑損控除、医療費控除、小規模企業共済控除、寡婦控除、ひとり親控除などがあります。父母共に健在で、大きな病気などもなく、iDeCoなども契約していない場合は、「控除額」が0円のケースもあります。
なお、所得という言葉は、所得税の計算や住民税の計算などにも使われますが、それぞれ計算方法が異なります。同じ言葉を使っていますので誤解されやすいのですが、算出額が変わります。
所得制限限度額の例
内閣府の児童手当についてのページを見ると、所得制限は次の表のようになっています。
表2 扶養人数による所得制限限度額と所得制限上限額
扶養人数 | 所得制限限度額 | 所得制限上限額 |
---|---|---|
0人 | 622万円 | 858万円 |
1人 | 660万円 | 896万円 |
2人 | 698万円 | 934万円 |
3人 | 736万円 | 972万円 |
内閣府 児童手当制度のご案内をもとに作成
※扶養人数が1人増えるごとに限度額は38万円(70歳以上の方と同居している場合は1人当たり44万円加算)
実際の例を挙げて扶養対象人数と所得制限限度額を考えてみましょう。
- ・父:正社員、妻:パート(夫の扶養)、こども:小学生1人
この場合は、妻とこども2人が扶養対象になりますので、所得制限限度額は698万円になります。 - ・両親:夫婦で自営業、こども:中学生1人、小学生1人
この場合は、こども2人が扶養対象になりますので、所得制限限度額は698万円になります。 - ・シングルマザー:正社員、こども:中学生1人、祖母:年金暮らし(75歳)
この場合は、こども1人と祖母が扶養対象になります。扶養対象が70歳以上の場合は加算額が変わりますので、所得制限限度額は704万円になります。
児童手当の改正
現在の児童手当の問題点
現在の児童手当は次のような問題があるとされています。1つ目の項目は「こども未来戦略方針」の中でも指摘されています。
すべてのこども達への経済支援という目的から外れる
児童手当はすべてのこどもに向けた経済支援と位置付けられています。
しかし、現在の児童手当は所得制限があり、中学生までの給付です。家庭の環境やこどもの年齢で制限を受けているため、すべてのこどもが対象になっていないことが問題だとされています。
また、こどもの人数が多いとその分費用負担が大きいと考えられます。こどもの人数が多い世帯へのサポート強化も検討されました。
世帯収入で比較すると逆転現象がおこる
所得制限は個人の所得で判断されます。そのため、1人の高所得者と共働き世帯を比較すると、前者は児童手当を受取れないにもかかわらず、世帯所得が低くなるケースがあります。
例えば、次のような2つの世帯を比べてみます。世帯所得で見てみると、例2の方が多いですね。
例1夫:正社員(所得960万円)、妻:専業主婦、こども:小学生1人
例2夫:正社員(所得600万円)、妻:正社員(所得400万円)、こども:小学生1人
児童所得の受給額は、例1も例2も、夫の所得で決まります。例1の世帯は所得上限限度額を超えているので、児童手当を受取れません。一方、例2の世帯は所得制限限度額を下回っているので毎月1万円受取れます。
「こども未来戦略方針」の内容
現在の児童手当の問題を解決するために、次の内容が明記されました。
- ・所得制限撤廃
- ・高校卒業まで支給
- ・第3子に毎月3万円支給
これらの変更により、世帯の所得に関係なく児童手当を受取ることができ、高校生のこどもがいる家庭にも給付できるようになります。
しかし、児童手当改正には注意点もあります。
まずは、第3子の数え方です。現行と同じであれば、高校生以下のこどもの数です。ですから、兄や姉が高校卒業すると、3万円の支給から1万円支給にかわります。
もう1つの注意点は、「高校生の扶養控除との関係をどう考えるか整理する」とも明記されたことです。具体的にどうするかは今後の議論次第ですが、もし、高校生の扶養控除がなくなった場合、高校生のこどもがいる家庭では、所得税と住民税が増えることになります。
増える金額は所得税の税率によって変わりますが、平均年収ですと所得税率は20%位になります。税率20%の場合、住民税との総額で年間約11万4,000円税金が増えます。また、所得制限対象の人の税率はもっと高くなります。仮に所得税率33%の方で計算してみると、住民全と総額で年間約16万3,400円増えることになります。
支払う税金額をみると、1年間で12万の手当てが増えても、扶養控除がなくなるとあまり効果はないかも知れません。
しかも住民税額は、高校無償化の判断材料になります。住民税額が増えたことで、高校無償化の対象外になってしまうと、こちらの方が家計に大きな影響を与えるかもしれません。
まとめ
発表された「こども未来戦略方針」では、現在の児童手当の問題を解決するための改正だと書かれています。しかし、同時に高校生の扶養控除の扱いが議論されることになりました。
この記事では、児童手当は子育てへの経済的なサポートであることもお伝えしました。子育て世帯が経済的にメリットを得られるかどうかは、高校生の扶養控除の扱い次第となりそうです。
※6月18日執筆時点
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