【FP監修】マイナ保険証とは？メリット・デメリットを解説！

2021年10月から始まった、マイナンバーカードの保険証利用。

2023年4月には、すべての医療機関や薬局において、カードリーダーなどのシステム導入が義務付けられました。

さらに、2024年秋頃を目途にマイナンバーカードと健康保険証を一本化する方針も示されています。

マイナンバーカードを保険証として利用する際のメリットやデメリットについて、解説します。

マイナンバーカードを健康保険証として利用することを“マイナ保険証”といいます。

もともと、社会保障や税、災害対策の3分野における情報連携、行政手続き簡略化のために導入されたマイナンバー（個人番号）ですが、健康保険証機能が追加され、医療保険領域でもサービスが使えるようになりました。
では、どのようなメリットがあるのでしょうか？

マイナンバーカードを保険証として利用するメリットは主に以下の5つがあります。

窓口で限度額以上の支払いが不要になる

医療機関等で高額な医療費が発生する場合でも、マイナンバーカードを保険証として使うことで、患者さんが一時的に自己負担したり、役所で限度額適用認定証の書類申請手続きをしたりする必要がなくなります。

医療費控除の確定申告がカンタンになる

マイナポータルから保険医療を受けた記録が参照できるため、領収証を保管・提出する必要がなく、簡単に医療費控除申請の手続きができます。

就職・転職・引っ越し後も健康保険証として利用できる

従来の健康保険証は、就職や転職、引っ越し時に更新手続きを行い、新しい健康保険証が届くまで待つ必要がありました。マイナンバーカードを保険証として使う場合、医療保険者への手続きが済んでいれば、新しい健康保険証の到着を待たずに、医療機関・薬局で健康保険証として利用ができます。

国民健康保険や後期高齢者医療制度に加入している場合でも、定期的な被保険者証の更新は必要ありません。ただし、医療保険者等が変わる場合は加入の手続きが必要となるため、忘れずに行いましょう

過去の診療情報データに基づいた診断を受けられる

マイナンバーカードを使って医療機関を受診する際、過去に処方された薬の履歴や特定健診結果（＊1）などの情報提供に同意すると、過去の診療情報に基づいた総合的な診断や適切な薬の処方を受けることができます。
マイナポータルからも、自分の過去の診療情報を閲覧できるため、健康状態の把握もしやすくなります。

（＊1）特定健診とは、40～74歳を対象に実施される、メタボリックシンドロームに着目した生活習慣病予防のための健康診断のことです。
（参考）厚生労働省ホームページ　「特定健診・特定保健指導について」

従来の健康保険証を利用するよりも、医療費が安くなる

政府は国民のマイナンバーカードの保険証利用を促すため、特例措置として2023年4月～12月まで、マイナ保険証を利用し診療情報の提供に同意した場合に、従来の健康保険証よりも医療費が安くなるように診療報酬を改定しています。

※3割負担の場合の自己負担の目安は（）内の金額を参照。
※厚生労働省「オンライン資格確認等システムについて」を参考に筆者が作成。

ただし、上記の医療費が適用されるのは、オンライン請求をしており、マイナ保険証が利用できる体制が整っているなど、一定の条件を満たした医療機関等に限られています。
すべての医療機関や薬局において、マイナ保険証を利用すれば医療費が安くなるわけではありませんので、ご注意ください。

マイナンバーカードを健康保険証として利用するデメリットは4つあります。
しかし、今後システム導入が進み、利用が定着すれば改善される点も含まれますので、その点はご留意ください。

2023年5月現在、利用できる医療機関が限られている

2023年4月より、すべての医療機関や薬局でのシステム導入が義務付けられましたが、2023年5月現在、マイナ保険証が利用できる医療機関・薬局は全体の約7割程度（＊2）となっています。

（＊2）厚生労働省ホームページ「オンライン資格確認の都道府県別導入状況について」2023年5月28日時点のエクセルファイルを参照

マイナ保険証は、システムが導入されている施設でしか利用できません。
そのため、マイナ保険証のシステム導入がされていない医療機関を受診した場合、マイナ保険証を所持していても、従来の健康保険証が無ければ保険資格の確認がとれず、一時的に全額自己負担となる場合もあります。

現状は医療機関の体制が追い付いていない状態なので、しばらくは健康保険証とマイナ保険証の2枚を持ち歩くのが安心といえるでしょう。

なお、マイナ保険証が利用できる医療機関・薬局は、厚生労働省のホームページで確認することができます。

マイナンバーカードの有効期限が切れていると、健康保険証として使用できない

マイナンバーカードや電子証明書の有効期限が切れている場合、健康保険証として利用することができません。
また、健康保険証の変更手続き前後は、医療保険者側の手続きが反映されておらず、利用できないこともあるようです。

その他、マイナンバーカードが破損している場合、正しく情報が読み取れず、利用できないことがありますので注意しましょう。

システムの不具合が発生した場合、利用できないことがある

マイナ保険証はシステムで管理をしているため、通信トラブルなどの不具合が生じた場合に、利用することができません。
その場合、従来通り健康保険証での資格確認を行うことになるため、前述の通り、マイナ保険証のみを所持していた場合、一時的に全額自己負担となることがあります。

紛失した場合、再発行に時間がかかる

現在、マイナンバーカードの再発行には1か月～2か月程度の時間がかかります。
仮に紛失してしまった場合、まずは個人情報漏洩リスクを防ぐため、カードの利用を止めます。その後、お住まいの市区町村にて再発行手続きを行いましょう。
政府は2024年秋頃までに、10日間程度でマイナンバーカードを発行できるよう対応を進めるようですが、それでも待機期間は発生してしまうため、この点はデメリットといえるでしょう。

マイナンバーカードを健康保険証として利用するには、申請が必要です。申請方法と使い方を説明します。

マイナンバーカードを健康保険証として利用するための申請方法は？

マイナポータルアプリによるオンライン申請のほか、市区町村の窓口、セブン銀行のATMから事前に利用登録ができます。
また、医療機関等を受診した際に、カードリーダーの画面で、そのまま初回の利用登録をすることも可能です。

マイナ保険証の受付方法は？

受付時に、患者自らがマイナンバーカードを窓口に設置されたカードリーダーに置きます。「顔認証付きカードリーダー」の場合は、顔認証または４桁の暗証番号を入力し、本人確認を行います。

「汎用カードリーダー」の場合は、患者が４桁の暗証番号を入力する、もしくは窓口職員の目視により本人確認を行います。

2024年秋頃には、紙の健康保険証の利用を廃止し、マイナンバーカードに一本化する方針が示されています。
現状は、医療機関や薬局でのシステム導入体制が追い付かず、不具合や不確定要素があるマイナンバーカードの保険証利用ですが、今後利用が広がっていくのは確実と思われます。
政府はマイナ保険証の利用を促すために、健康保険証の利用登録をするとマイナポイントがもらえるキャンペーンも実施しています。

しかし、その一方で、情報漏洩のリスクからマイナンバーカードを所持したくない、という方もいらっしゃると思います。
マイナンバーカードを保険証利用する際のメリット・デメリットを理解し、ご自身のスタイルに合わせて、うまく活用するようにしましょう。

2023年6月時点の法令に基づき執筆